TOPIC

歴史資料群、調査整理へ「奥州モデル」(産学官連携成果を共有)

御陣乗太鼓(石川県輪島市)圧巻の演技 歌手・木原さん、公演に招く(奥州市水沢)

御陣乗太鼓(石川県輪島市)圧巻の演技 歌手・木原さん、公演に招く(奥州市水沢)
圧巻の演技を見せた石川県輪島市の御陣乗太鼓=Zホール

 石川県輪島市が誇る郷土芸能「御陣乗太鼓(ごじんじょうだいこ)」が26日、奥州市文化会館(Zホール)で開かれた演歌歌手・木原たけしさん(76)=胆沢南都田、テイチクエンタテイメント所属=のリサイタルにゲスト出演。迫力ある圧巻の演技で観衆を魅了した。同太鼓を取り上げた木原さんの持ち歌が縁で実現した“出張公演”だが、輪島市は昨年の地震や豪雨災害で甚大な被害を受けた地域。苦難を乗り越え伝統継承に奮闘する打ち手たちに、観衆は温かい拍手を送った。
 輪島市名舟町に伝わる同太鼓は、1576年に上杉謙信軍が名舟に攻め入ろうとした際、鬼や亡霊に見立てたお面と海藻で作った頭髪で変装し、太鼓を打ち鳴らして上杉軍を追い払ったのが起源とされている。石川県指定無形民俗文化財、日本遺産「灯り舞う半島 能登」構成文化財になっている。
 木原さんは2012年、「風雪御陣乗太鼓」をリリース。しかし輪島市を訪れる機会がないまま月日が流れる中で発生したのが、昨年1月1日の能登半島地震だった。
 同8月に木原さんと歌仲間は、水沢横町の奥州市まちなか交流館でチャリティーショーを開催。会場で集めた義援金を同太鼓保存会に寄付したが、9月の豪雨災害の影響でATMが使えず「入金情報が確認できない」との知らせを受け、被害の深刻さを痛感した。
 今回のリサイタルは、新曲「路地裏おとこ酒」のリリースを記念した企画だが、木原さんはリサイタルに御陣乗太鼓を招待しようと決断。保存会関係者の快諾を得て実現に至った。
 リサイタル終盤「風雪御陣乗太鼓」を歌い上げた木原さんに続き、鬼や亡霊の面をかぶった5人の打ち手が登場。威勢よく太鼓をたたき、怒り狂うような舞を披露し観衆はくぎ付けになった。
 出演した保存会事務局長の槌谷博之さん(57)は、1月の地震で自宅が半壊。現在も仮設住宅で暮らす。「地震を機に若い人たちが金沢市などに転居してしまい、後継者の確保が課題になっている」と語る。一方で今回のように県外に出張して披露する活動が格段に増え、北海道と四国を除く地域で約200件こなしている。「応援の声をもらうことが何よりうれしい」と話していた。
 木原さんは「被害状況を聞いて『風雪御陣乗太鼓』を歌うことをためらった時期もあるが、今はこの曲を歌うことで彼らへのエールにもつながっていると感じている。とても迫力がある演技だった」とメンバーをねぎらった。