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後藤新平の葬儀映像、国立映画アーカイブがウェブ公開
国立映画アーカイブ(NFAJ、東京都中央区、岡島尚志館長)は、水沢出身の政治家・後藤新平の葬儀の一部始終を記録した映像をウェブサイト「フィルムは記録するー国立映画アーカイブ歴史映像ポータルー」( https://filmisadocument.jp/ )で公開している。葬儀委員長を務めた同郷の斎藤實ら、日本の近代政治史に名を残した人物や海外要人、ボーイスカウトたちの姿もあり、後藤を慕った人たちの多さを感じさせる。
(児玉直人)
斎藤實ら要人参列(奥州市の記念館、人物同定に協力)
NFAJは、独立行政法人国立美術館が運営する日本唯一の国立映画機関。戦前を中心に約5万本の文化・記録映画を保有している。当時の日本社会を知る上で貴重な映像群を広く共有できるようにと、国立情報学研究所との共同制作で昨年3月に同サイトを開設。今年9月までに219本を公開している。
後藤の葬儀記録は35分の無声映画。1968年に米国議会図書館から返還されたフィルムをデジタル化した。同作がアメリカに渡った経緯は不明だが、NFAJの担当者によると▽終戦後に連合国軍総司令部(GHQ)が接収した▽戦前に米国移住した日本人に見せるための映画に入っていた――などが考えられるという。
後藤は1929(昭和4)年4月4日、岡山へ向かう途中の列車内で倒れ、同13日に京都の病院で死去。映像は東京日日新聞(現・毎日新聞)に掲載された訃報から始まる。ひつぎは列車で京都から運ばれ東京駅へ。ホームには沈痛な面持ちで列車を待つ後藤家の遺族たち、長いひげをたくわえた国家主義運動家・頭山満らの姿がある。後藤と共にボーイスカウトの普及に努めた政治家・三島通陽らは団独特の敬礼姿勢「三指の敬礼」でひつぎを迎える。
自宅での葬儀に映る烏帽子に直垂姿の男性は喪主の長男・一蔵で、白い和服を着た女性は一蔵の妻・春子。映像開始13分25秒のあたりでは、葬儀委員長を務めた斎藤が数秒登場する。
16分25秒からは青山斎場での告別式。後に「ライオン宰相」の異名で知られる浜口雄幸らが続々と弔問に訪れた。やがて青山墓地へ運ばれたひつぎは、遺族らに見守られながら埋葬。ここでもシルクハットをかぶった斎藤の姿を確認することができる。
斎藤ら人物の同定には、奥州市立後藤新平記念館(佐藤彰博館長)が協力した。同館の中村淑子学芸調査員は「葬儀に関する文書記録はあるが、このような角度で撮影された映像は見たことがなかった。とても貴重で、後藤家や政界の人たちとの関係を知る情報があふれている」。NFAJの担当者は「映画を公開することで、私たちだけでは分からない情報が、さまざまな人たちの知見から新たに探ることができる」と話している。