胆沢ダム 最低水位更新(農業用水取水を停止、広域水道は確保)
胆沢ダム 最低水位更新(農業用水取水を停止、広域水道は確保)
胆沢平野土地改良区(千田公喜理事長)は20日、渇水による胆沢ダム貯水率低下を受け、同ダム水系の農業用水の取水を停止した。同改良区が渇水で断水に踏み切るのは、旧石淵ダム時代の2012(平成24)年以来で、胆沢ダム移行後は初。米どころを支える国内最大級のロックフィルダムも、少雨の長期化という想定を超える異常気象にはかなわなかった。胆江地方の水稲生育状況は、水を多く必要とする時期は終わったとみられるが、直播(じかまき)栽培などを実施している一部水田では、まだまだ水が必要という。胆江広域水道用水は計画通り放流している。
(児玉直人)
供用開始後初の事態(貯水率3.5%、“最大級”も少雨に勝てず)
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同改良区は9月10日まで通水する計画だった。今月14日、渇水状況を受け緊急の理事会を開き、水位回復の見込みがなければ20日から断水する方針を決めていた。
同改良区の全賦課面積約9200haのうち、約7300haが胆沢ダム水系の農業用水を利用。穂がおおむね出そろい、大量の水を必要とする時季は終わりつつある。しかし同改良区によると、約6000haの水稲圃場(ほじょう)のうち約1割を占める直播栽培の圃場では、まだ水が必要になると推測。千田理事長は「組合員の皆さまには大変申し訳ない。雨が降らない限りどうしようもない」と苦悩の表情を浮かべた。
国土交通省胆沢ダム管理支所の小原竜光支所長によると、農業用水と同じルートで取水している胆沢第一発電所も稼働停止。一方、胆江広域水道と河川維持流量分は、計画通り放流している。維持流量の一部を活用している胆沢第三発電所も稼働中だ。放流量は1秒間に約2t。上流からの流入量が同3tで推移しており、流入量を下回らない範囲で放流している。
最低水位の標高304mに対し、20日午後4時現在の貯水位は同306.89mで過去最低を更新。貯水率は3.5%となっている。
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ダム湖内には旧石淵ダムの提体のほか、国道397号旧道や猿岩トンネルなど湖底に沈んだ構造物が姿を現し、見物に訪れる人たちの姿もちらほら。ダム湖上流部は湖底が見える状態で、一部分は完全に干上がっていた。胆沢川本流の流入水が湖底を蛇行するように流れる異様な光景が広がっている。
国交省北上川ダム統合管理事務所は22日午後3時から、今年2回目の利水協議会を胆沢ダム管理支所で開く。土地改良区や発電所など胆沢ダムの利水関係者に今後のダム運用方針などを示し、情報を共有する。