TOPIC

歴史資料群、調査整理へ「奥州モデル」(産学官連携成果を共有)

歴史資料群、調査整理へ「奥州モデル」(産学官連携成果を共有)

歴史資料群、調査整理へ「奥州モデル」(産学官連携成果を共有)
産学官連携によるデジタル技術を使った資料群の整理、公開について理解を深めたシンポジウム

 「『下飯坂家文書』公開記念 産学官三者連携事業の成果と課題シンポジウム」は20日、水沢地区センターで開かれ、産学官連携による地域資料群の扱い方や公開方法について市民と共に考える機会とした。奥州市教育委員会歴史遺産課は「資料群の調査を市だけでなく、各機関や企業と連携し工夫することで、整理や素早い公開が続けられている。『奥州市モデル』ができたと思う」と説明。登壇した研究者からも、同事業の成果を評価する声が相次いだ。
(宮本升平)

政治家・下飯坂権三郎(水沢出身)の古文書群公開記念でシンポジウム

 国立歴史民俗博物館メタ資料学研究センター、合同会社AMANE(あまね)、市教委が主催。3者はこれまで、明治時代の水沢の政治家・下飯坂権三郎(1852-1923)に関する古文書群「下飯坂家文書」(市所蔵)を使い資料整理、インターネットによる「逐次公開」のモデル事業を展開してきた。今回、同文書の一部が公開、活用される段階になったことから市民や研究者への紹介も兼ね、関係者によるシンポジウムを企画した。
 全国から歴史学や情報学、資料学などの研究者8人が出席。市民ら約40人が、新しい地域の歴史研究の在り方について理解を深めた。
 第1部の「下飯坂家文書調査モデルの構築と課題」では、近代政治史を研究する東北大学大学院の伏見岳人教授が登壇。明治時代の国政選挙の内容を克明に記す同文書の内容や価値などを解説。同文書の公開システムであるデジタルアーカイブ(画像などデジタル技術による記録や保管)の立場から、慶応義塾大学の福島幸宏准教授が評価した。
 第2部「産学官連携事業の成果と課題」は、同事業を担った3者から代表者がそれぞれ登壇した。市教委歴史遺産課の高橋和孝主任学芸員は「下飯坂家文書をはじめとする資料群の調査を費用や人員、システムの面で、市だけでなく歴史民俗博物館など各機関、企業と連携し工夫することで調査や整理、素早い公開が継続してできている。『奥州市モデル』ができたと思うし、他の市町村でもこのモデルは有効ではないだろうか」と解説。
 同博物館の後藤真准教授は「地域の歴史資料はどんどん消失している。これは地域の人たちや社会が息づいてきた証しが失われているのと同じ。だからこそ後世に残していかなければならない」と指摘。少子高齢化などで人員が少なくなる中で資料を保存、公開していくため、デジタル技術などの使用により省力化や作業時間の短縮になる利点を説いた。
 このほか登壇者によるディスカッションや質疑応答なども行われた。