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平谷美樹さん(金ケ崎)、作家デビュー25周年記念し『安倍宗任伝』

平谷美樹さん(金ケ崎)、作家デビュー25周年記念し『安倍宗任伝』

平谷美樹さん(金ケ崎)、作家デビュー25周年記念し『安倍宗任伝』
作家デビュー周年を迎えた平谷美樹さん

 金ケ崎町在住の作家・平谷美樹(ひらやよしき)さん(65)がデビュー25周年を迎えた。節目の記念作品『安倍宗任伝 前九年・後三年合戦』(実業之日本社、定価2530円)が24日、発売される。胆江日日新聞で2019(令和元)年6月1日から23年2月12日まで連載した『大宮人は如何(いか)にか言ふらむ』を加筆修正した作品。平谷さんは「出し続けてくれる出版社と手に取ってくれる読者、そして友達の支えがあっての25年」と振り返り、「地元金ケ崎町の国指定史跡・鳥海柵跡のために、何かできることはないかと書き始めた作品。単行本をようやく皆さんにお届けできる」と笑顔を広げた。

 久慈市で生まれ、小学4年生の時に金ケ崎町へ。大阪芸術大学を卒業後、美術教諭として県内中学校に勤務した。江刺第一中勤務時代の2000(平成12)年、『エンデュミオンエンデュミオン』で作家デビュー。『エリエリ』で第1回小松左京賞、『風の王国』で歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞した。
 SF小説でデビューした平谷さんだが、近年は江戸を舞台にした時代小説や、奥州藤原氏、源義経などを取り上げた歴史小説を次々と送り出している。「安易にSF設定を入れたくないが、科学的な理屈を入れると難しくなる。SFは長く続けられないと思っていた。時代小説に興味があり、手始めに江戸ならと吉原を舞台にした短編を書いたら評価してもらえたので、本格的に勉強を始めた」と振り返る。
 友人から「奥州藤原氏が面白い」と言われて調べたことがきっかけとなり、県内の歴史的な出来事や人物を取り上げた作品も多い。「史実として残っているエピソードを骨にして、できるだけ面白く、意外な方向にいくように間を想像で埋めていく」と創作の裏側を明かす。
 金ケ崎町の国指定史跡・鳥海柵跡の主を主人公に、前九年・後三年合戦を取り上げた『安倍宗任伝』。朝廷により滅ぼされようとするとき、安倍氏は一族の多くを犠牲にしても後の世の民のために血をつなごうと策を巡らせ戦い、その血は奥州藤原氏へとつながっていく――。単行本化に当たり、連載版から内容を凝縮。物語の後半、安倍の血を残すことへの宗任の意志を強調したり、後三年合戦では世代交代を印象付けるよう清衡が活躍する形にしたりと一部加筆した。「どう滅びるかが重要だった。宗任はその中心となって立ち回った」と思いをはせる。
 昨年11月には自身100冊目となる長編時代小説『天酒頂戴』(小学館文庫)が刊行された。「100冊も25周年も、周りのみんなが喜んでくれるからめでたいことかも」と照れ笑い。「“なった気”にならないことを大事にしてきた。1冊ずつ書いていたら100冊になり、目の前の仕事をしていたら25年たった。まだまだ書きたいことが次々出てくる」と温めている創作のアイデアを語る。
 デビュー時に「運のいい名前だからこのままで」と言われ、本名・平谷美樹で書き続ける。心臓病で教員と作家の二刀流は諦め、『大宮人は…』の連載中には、肺がんの手術中に心臓が一時止まった。「大病したがぎりぎりセーフで生きている。病気で教員を辞めなければ新聞連載も無理だった。転んでもただでは起きない」と前向きに創作意欲を燃やし続ける。

平谷美樹さん(金ケ崎)、作家デビュー25周年記念し『安倍宗任伝』
胆江日日新聞で連載した『大宮人は如何にか言ふらむ』を単行本化した『安倍宗任伝 前九年・後三年合戦』(実業之日本社)