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ブラックホールの活動期捉える

ブラックホールの活動期捉える

ブラックホールの活動期捉える
さまざまな手法で捉えられたM87本体やジェットの姿。矢印が水沢の電波望遠鏡などで捉えたジェット。下グラフはガンマ線の検出データ(EHTなど提供)

 天文学の国際研究チームは13日、巨大ブラックホール(BH)が活動期にあるのを示す「ガンマ線フレア(大爆発)」を検出したと発表した。人工衛星や電波望遠鏡など、17の施設や観測網が参加した大規模な一斉観測による成果。国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)敷地内の20m電波望遠鏡「VERA(ベラ)」なども活用した。研究者たちは、BHの活動状態や周期性の有無、爆発が起きる仕組みを知る手がかりが得られたと強調する。
(児玉直人)

電波望遠鏡や人工衛星で一斉観測(水沢の望遠鏡も参加)

 観測対象としたのは、楕円銀河「M87」。おとめ座が見える方向にあり、地球から約5500万光年(1光年=約9.5兆km)離れている。その中心部にある巨大BHは、2019年4月に「人類が初めて目にするBH」として画像公開されたことで知られる。
 今回の成果に至った観測自体は2018年に行われたものだが、数年かけて解析や検証を実施。今月13日付の天文学専門誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジクス』に論文を掲載した。
 確認されたガンマ線大爆発のエネルギーは、人間の目で確認できる光(可視光線)の数千億倍。BHからプラズマ粒子が高速で噴き出す「ジェット」の根元部分で生じているとみられ、この膨大なエネルギーを一度に放出することは、並大抵のことではないという。
 観測には、M87の巨大BH撮影を初成功させた研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」をはじめ、東アジアVLBIネットワーク(EAVN)、さらには宇宙空間に浮かぶ観測用人工衛星など、計17の装置や施設、観測網がかかわった。このうち3施設(いずれも日本国外)は、2018年の観測より10年ほど前に同様の大爆発を確認。それ以来の公式的な検出成果となる。
 EHTには、本間所長ら水沢関係の研究者らも参加。EAVNを構成する電波望遠鏡観測網には、VERAが含まれている。さらに、研究チームが実施した理論・シミュレーションでは、今年8月まで稼働していたスパコン「アテルイ2」を使用。壮大な規模の研究に、水沢の人材と装置が活用されたことになる。
 水沢観測所客員研究員やEHTメンバーでもある、名古屋市立大学の秦和弘(はだ・かずひろ)准教授は「参加する観測網や施設が扱う電波の波長が異なるため、さまざまな観点で活動期を検証できる。EHTによる観測が始まってから、世界中の天文関係者が『一緒にやろう』と、お祭り騒ぎのような雰囲気になり、今回のような大規模観測ができた」と説明。本間所長は「今回の観測では、日本を含む東アジアの観測網が重要な役割を果たしており、水沢に縁がある研究者も多く携わっている。今後の研究での活躍も期待している」とコメントしている。