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ブラックホールの活動期捉える
信頼築く姿勢重要(ILC計画巡り2教授が講演)
素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の日本誘致実現を目指している研究者組織「ILCジャパン」代表の浅井祥仁・東京大学教授と、文部科学省のILC有識者会議委員を務めた横山広美・同大学教授は6日、仙台市内で講演した。ILC計画の意義をあらためてアピールする一方、決して容易ではない手順を踏んで政府間協議に進む必要がある点や、社会や国民に対する信頼を築く姿勢を持つことが大切だと指摘した。
(児玉直人)
最新の推進状況も紹介
東北ILC推進協議会(共同代表=大野英男・東北大学総長、増子次郎・東北経済連合会会長)総会に合わせて開催。両教授による講演と対談で、ILC計画の最新動向や誘致活動を進める上での留意点などについて理解を深めた。
浅井教授は「ILCは宇宙誕生の様子を再現するが、よく『何の役に立つのか』と言われる。基礎科学は社会基盤の一部を担っており、知性に対する貢献は極めて大きい」とアピールした。
さらに「世界が協力して建設するという雰囲気、共通理解をどう形成するかが鍵。それができて初めて政府間協議に入れる。今は『日本の計画だ』と思われており、決して簡単なことではない」と指摘。
その上で「ILCは一番技術的に安く、環境に優しい実験装置。今まで推進してきた日本にはアドバンテージ(優位性)があり、私も自信を持っている」と述べた。
昨年も同協議会主催の講演会で登壇した横山教授は、巨大科学プロジェクトの推進には、透明性の確保とコミュニケーションを十分に図ることが大切であると、あらためて訴えた。
横山教授は「研究者だけでなく、彼らを応援している皆さんにも、社会や国民に対する責任がある」と主張。
「科学技術に対する期待が過度になると、急激なピークダウンが起き、継続的な活動ができなくなる危険性をはらんでいる。取り組みを推進すべき時期と、じっと待つべき時期があることを認識し、無理のないよう状況を見極めてほしい」と理解を求めた。
横山教授はまた、「たとえ難しい事柄であっても情報をオープンにし、ひざを突き合わせて対話することで、信頼感は生まれる。隠し事のない議論が重要だ」とも話した。
誘致実現へ決議文採択(東北推進協総会)
東北ILC推進協議会の総会は6日、仙台市内のホテルで開かれ、岩手県南部の北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設・ILC誘致実現に向け、決議文を採択した。
同協議会は決議文で、日本政府に対し①日米欧政府間の国際協議の本格化②実験装置の国際共同開発研究への予算措置――を求めている。
あいさつで、増子次郎共同代表は「国際的な動きを踏まえながら協議会会員や(国会の)ILC議連、研究者組織、文科省などと連携し、誘致に向けた取り組みを強化していく」とアピールした。