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ブラックホールの活動期捉える

多角的な教育施設へ(奥州宇宙遊学館 開館15周年)

多角的な教育施設へ(奥州宇宙遊学館 開館15周年)
開館15周年を迎えた奥州宇宙遊学館

 水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館(亀谷收館長)は今月、開館15周年の節目を迎えた。国立天文台水沢キャンパス敷地内という立地環境も手伝って、特色ある学習拠点、観光スポットとして認知度を上げてきた。指定管理者のNPO法人イーハトーブ宇宙実践センター(大江昌嗣理事長)は今後の運営について、飽きを感じさせない工夫が必要だと認識。展示テーマや各種行事のさらなる充実に向け、思案している。
(児玉直人)

「飽きさせない工夫」思案

多角的な教育施設へ(奥州宇宙遊学館 開館15周年)
新たな展示品として活用が期待される人工衛星の実物

 同館は、1921(大正10)年に建築された水沢緯度観測所2代目本館を修復し、2008(平成20)年4月20日に開館。2代目本館は老朽化を理由に2006年に取り壊す計画だったが、保存活用を求める市民運動により、博物館的な施設として生まれ変わった。
 入館者は開館初年度が1万2620人。10周年の2018年度は1万9666人となった。翌年は、人類初のブラックホール撮影に国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長らが携わっていたことが大々的に報道され、過去最多の2万5837人が来館した。
 しかし新型コロナウイルスの影響で、2020(令和2)年度は9995人、2021年度は7991人、昨年度は1万1878人にとどまった。
 来館者数の回復が当面の課題。魅力的な施設を目指す一環として、打ち上げ予定だった本物の人工衛星「ナノ・ジャスミン」の展示を計画している。国立天文台から寄贈されたもので、亀谷館長は「どのような形で活用できるか検討中だ」と意気込む。
 一方で、天文学だけに偏らない事業展開も意識している。同NPOは、科学技術や文化、歴史、農業など、あらゆる分野の学術を扱い、次代を担う子どもたちの教育に資する目的で設立された経過がある。
 施設名称や天文台敷地内から受けるイメージはあるものの、大江理事長は「遊学館は決して天文学や理系に特化した施設ではない」と強調。生物標本の展示、宮沢賢治とのつながりに関する説明コーナーを生かし、「各分野の専門家の助言も受けながら、内容の充実を図っていきたい」と語る。
 教育関係との連携強化も重要なポイントだ。保存活用の市民運動をリードした、同NPOの佐藤一晶副理事長は「生涯学習施設という位置付けになっており、学校教育との連携がまだ弱い」と指摘。子どもたちだけでなく、教職員や行政職員も含め、遊学館の機能を理解し、学びを深める状況を築く必要があると主張している。