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聞いて納得 歴史や偉業(現役天文台職員がボランティアガイド)

聞いて納得 歴史や偉業(現役天文台職員がボランティアガイド)

聞いて納得 歴史や偉業(現役天文台職員がボランティアガイド)
親子連れに眼視天頂儀室の説明をする蜂須賀一也さん(左)

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)に勤務する蜂須賀一也さん(53)は昨年から、土日を中心に観測所敷地内を案内するボランティア活動に励んでいる。「ノスタルジックガイドツアー」(奥州宇宙遊学館主催)と銘打ち、同観測所の前身、「緯度観測所」について科学と歴史の両面から解説。蜂須賀さんは「歴史的価値や偉業を広く伝えたい」と意気込んでいる。
(児玉直人)


「広く価値伝えたい」(主催は奥州宇宙遊学館)

 茨城県出身の蜂須賀さんは国立天文台に採用後、スペインなど海外の観測施設での業務を経験し、2016(平成28)年から水沢に赴任。特定技術職員として、電波望遠鏡の運用や観測データの処理に従事している。
 3年ほど前からは、敷地内の木村栄記念館など文化財管理も兼務。時をほぼ同じくして、緯度観測所の歴史を研究している馬場幸栄・国際日本文化研究センター特任准教授の活動に触れ、観測所が歩んだ歴史を広く伝える重要性に気付かされた。
 昨年、同天文台への寄付金を活用して、老朽化が著しかった眼視天頂儀室を修繕。安全に内部が見学できるようになり、昨年7月20日からガイドツアーが始まった。今年3月までの初年度は27回開催し、延べ342人が参加した。
 蜂須賀さんは参加者の年齢層のほか、会話を通じて天文学に関する理解度を推察し、分かりやすい説明を心掛けている。「見た目はただの小屋だけれど……」などユニークなフレーズを用いて、観測所の歴史を気軽に感じてもらえるよう気を配っている。
 今年はさらに内容を充実し、午前と午後のツアーの合間にミニ講演会を開催。月替わりでテーマを設け、ツアー中に語り切れない豆知識を紹介する。夏の期間には、観測所と戦争との関係について触れる予定だ。
 2008年の遊学館開館以降、観測所敷地内は自由に見学できるようになっている。しかし同館関係者によると、「天文学は難しい」「場所の雰囲気が暗い」などの先入観が影響し、一度も来訪したことがない市民は少なくないという。
 同記念館や天頂儀室などは、国の登録有形文化財や日本天文遺産にもなっている。蜂須賀さんは個人的見解だと前置きした上で、「海外に現存する緯度観測所跡地とともに、ユネスコの世界文化遺産になっても良いくらいのレベルだと思う」と語る。「観光客のみならず、ぜひ地元の皆さん、子どもたちに足を運んでほしい」と話している。
 6日は午前11時と午後2時半にツアーを実施。ミニ講演会は午後1時から。いずれも30~40分ほど。このほか12日夜には、星空観察会に合わせ先着3組限定で夜の天頂儀室を案内する。26日から5月6日までの土日・祝日は特別バージョンとして、歴史的建造物から現在の観測装置まで、126年分の歴史を一気に触れられるツアーも行う。詳細は遊学館ホームページで。