天文台文化財の調査検討(奥州市、保存活用求める声受け)
天文台文化財の調査検討(奥州市、保存活用求める声受け)
奥州市が策定を進めている「文化財保存活用地域計画」素案に対するパブリックコメント(意見公募)の結果がまとまった。天文台文化財の保存や活用を求める声があり、市歴史遺産課は未指定文化財の把握調査などを検討する方針を示した。
(岩渕歩)
同計画は、各市町村が文化財の保存と活用に関する目標や具体的な施策を定める総合的な法定計画。意見は9月1日から30日まで募集し、市民3人から寄せられた5件のうち2件を反映、3件を「同趣旨・記載済み」とした。
反映する意見の一つは、計画内の観光分野紹介で記載順を変更する内容。もう一つは、これまであまり光の当たらなかった自然科学や近代史に関する文化財の保存活用を強化するものだった。同課は「自然科学系の資料についても計画対象に加える」として文化財の定義を広げた。
最も多く寄せられたのは旧水沢緯度観測所(現国立天文台水沢VLBI観測所)に関する意見で、5件中4件が該当した。観測所がほかの自治体にはない奥州市ならではの文化財であることや、明治期から続く科学史的価値が指摘された。
同課は回答の中で「同観測所が所蔵する文化財は国登録文化財3件を除き十分な調査がなされていない」と認め、「同観測所の意向を確認しつつ、未指定文化財の把握調査や収蔵文化財の詳細調査の実施を検討する」と回答。産学官民の連携による保存活用を進める姿勢を示した。
同課によると、市の文化財行政の最大の特徴は、指定文化財の数が多い点にある。指定件数は約300件に上り、他自治体と比べても突出。埋蔵文化財も多く、自然災害が少なかったことや戦災を免れたことが背景にあるという。
同課は「文化財の数が非常に多いため、全体を包括的に網羅するのは容易ではない」と説明しつつ、天文台関係の位置付けを明確にし、全国的にも不十分な近現代史分野の保存・活用を強化していく考えを示した。「まだ光が当たっていない資料は多い。指摘の通り、近現代の部分をしっかり取り組む必要がある」とし、天文台側が行っている施設公開などとも連携を図りながら取り組みを進める方針だ。
今後は来年1月をめどに計画最終案を取りまとめ、市文化財保護審議会の審議を経て文化庁へ素案を提出。7月の認定を目指す。