火星圏への旅 準備進む(MMX計画、水沢の研究者たちも参加)
ILC建設でトンネル新設計案、その名も「かまぼこ型」(北上高地が国内有力候補の)
北上高地(北上山地)が有力候補地の一つとなっている、素粒子物理学の大規模研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」の当初の完成予想イメージが変わりつつある。これまでは、地下に2本の長大なトンネルが掘られた完成予想図が紹介されてきたが、コスト削減や日本の地盤に適応するため、1本のトンネルにする設計案で現在協議が進められている。その断面図が「かまぼこ」に似ていることから研究者の間では「かまぼこ型」などと呼ばれている。
地下坑道2本から1本へ 地質に対応、コスト削減にも
ILCは、物質の成り立ちや宇宙の起源などを調べる、素粒子物理学の大規模研究施設。北上高地のほか、九州の脊振山地、スイスのジュネーブ近郊、アメリカのイリノイ州が候補地とされている。
ILCを実現に向け、研究者らによる国際設計チームが各地域の地形や地質などに立脚した工学設計書を作成中。その中で当初想定していた2本トンネル方式から1本トンネルに転換することが示された。これを受け、国内候補地の土木技術を研究するチームが産業界と協力し、日本の山岳地に適した工法を協議していた。
2本式は、これまで奥州市内などで開かれたILC関連の講演会や、奥州商工会議所が作成して市内各地に掲示しているポスターで広く知られている。2本のトンネルの一方は、加速器本体が収められ、もう一方は加速器への電源装置などを配置。人の立ち入りを禁止している加速器の運転中でも、電源装置類の修理や点検できるよう、それぞれ分離させている。
2本式の掘削には、円筒状の機械の先端に掘削用カッターが取り付けられた「トンネルボーリングマシーン(TBM)」の使用が考えられていた。しかし、TBM本体は非常に高価だという。
今回、日本の候補地向けに検討された「かまぼこ型」は、NATM(ナトム、新オーストリアトンネル工法)と呼ばれる工法で、かまぼこのような断面の穴を掘削。厚さ3.5mのコンクリート壁で空間を左右に区分けし、2本式に似たような状態にする。
NATM工法は「工事に時間がかかる」として、検討対象になっていなかった。しかし、スケジュールの工夫によりTBMより短くすることが可能なことが判明。また、断面が円形となるTBMよりも内部の空間を確保がしやすいという。
ILC計画に携わっている高エネルギー加速器研究機構(KEK)特任教授の吉岡正和氏は8日、仙台市内で開かれた国際経済政策調査会主催のILC講演会の中で、「かまぼこ型」トンネルを紹介。「日本に適したデザインだ」と説明した。
地震「影響は小さい」(吉岡教授=KEK=が強調)
KEK特任教授の吉岡正和氏は講演会の中で、地震が多い日本にILCが建設されることへの懸念について「地下トンネルにおける影響は、地上の建屋などに比べれば小さい」とし、さほど心配がないことを強調した。
吉岡氏はILCを日本に誘致する上での課題として、東日本大震災以降に懸念されている電力供給や地震による影響を取り上げた。
地震については、海外の候補地に比べ地震常襲地帯である日本に国際的な研究機関を作ることへの不安の声に対し、地上と地中での影響を調べたシミュレーションデータなどを紹介。また、ここ数年で起きた国内の大地震の際、新幹線のトンネル内の被害は、地上の建物などに比べ軽微だったことにも触れた。
吉岡氏は「過去の被害は小さかったにしても、それを教訓にさまざまな対策を講じている。そのことを考えれば(ILCのトンネル内が)重大な被害を受けることはないと思う」との見解を示した。