火星圏への旅 準備進む(MMX計画、水沢の研究者たちも参加)
もしもILCができたら…(上)「~東日本大震災からの復興に向けて~ILCを核とした東北の将来ビジョン」から
素粒子物理学の大規模研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」の有力候補地に、奥州市江刺区を含む北上高地(北上山地)が挙げられている。今月10日、東北ILC推進協議会(事務局・東北経済連合会)はILCが北上高地に実現したことを想定した「将来ビジョン(未来像)」を発表した。その中から、特にも地域住民や地元企業の関心事になるであろうILC周辺地域の“未来予想図”について、同ビジョンをもとにまとめてみた。
【中心範囲のイメージ】胆江東部は「国際科学技術研究圏域」の中心
■最先端科学技術エリア
【中核研究拠点(メーンキャンパス)】
「世界最高水準の最先端科学技術の研究空間」を目指し、ILC国際研究所や参加研究機関などの研究・管理機能を集積する。
多くの研究者や関係職員が通勤、あるいは来訪することを想定し、既存の市街地や主要交通網(新幹線駅や高速道IC等)に比較的近い場所に形成。整備面積は運用定常段階で100㌶程度を見込み、研究機関等の立地需要の増加に応じて段階的に整備していく。
《考えられる施設・機能》
▽研究オフィス…ILC国際研究所、参加研究機関・大学等(約370機関)のオフィスや研究室
▽管理・情報系施設…ILC加速器コントロールセンター、建物群管理センター、コンピューターセンター、図書館等
▽実験・研究施設…加速器/計測器関連実験・研究施設、超電導・低温・真空実験・研究施設等
▽会議・交流施設…ホール、中・小会議室、インフォメーションセンター、展示施設、研修センター等
▽宿泊・飲食施設…宿泊施設、レストラン、喫茶店等
▽サービス施設…医療施設、保育施設、銀行(ATM)、郵便局、コンビニ、行政出先機関等
▽交通施設…バス停留所、ヘリポート等
▽供給処理系施設…特高受変電施設、廃棄物処理施設、燃料貯蔵施設等
【計測実験拠点(サテライトキャンパス)】
ILCの素粒子衝突点となる地下、およびその地上部分に構築するいわば“現場事務所”のような位置付け。ILC本体は山腹に建設するので、衝突点に設置する機器類や関連施設は、必然的に既存市街地から離れた山間部に整備される。
運用定常段階で8ha程度の整備面積を想定。加速器技術の産業への波及効果を考慮し、放射光や高度放射線医療関連実験施設などを周辺に立地・集積させていく。
《考えられる施設・機能》
▽研究オフィス…ILC国際研究所や参加研究機関の出先オフィス・研究室等
▽管理制御施設…測定器オペレーションセンター、加速器メンテナンスセンター等
▽計測実験施設…実験ホール、測定器等
▽加工組み立て施設…加速器オンサイト工場、実験装置組み立て施設等
▽宿泊・飲食施設…簡易宿泊施設、レストラン、喫茶店等
▽サービス施設…売店、廃棄物処理施設等
▽交通施設…バス停留所、ヘリポート等
▽供給処理施設…特高受変電施設(中央変電施設)、熱エネルギー処理施設等
【先端産業集積拠点(科学技術産業パーク)】
ILC関連技術を応用した研究開発、製品試作・開発を行う企業等が集積するエリアだが、ILCに関係する企業だけに限定せず、幅広い先端技術産業の受け入れを考慮する。
成熟段階で100ha程度の整備面積を見込み、産業立地需要の増加に応じて段階的に整備していく。中核研究拠点と同様、利便性に考慮し、既存の交通網や市街地に比較的近い空間に形成する。
《考えられる施設・機能》
▽基礎・応用研究開発…ILC関連した技術の研究開発(加速器・測定器等)、ILCの派生技術による研究開発(新素材、新光学素子、次世代通信、大容量情報処理等)
▽製品試作開発…医療機器・製薬、環境・エネルギー、情報通信、精密機器、航空宇宙等に関する民間企業の製品開発事業所等
▽技術人材育成…ILCの運用やメンテナンスに携わる技術者などの育成機関等
▽創業支援…ILC派生技術を使い研究者らが企業を設立する際に創業を支援する施設等
▽分析サービス…加速器を活用し、物質構造解析などの分析サービスを行う企業・機関等
▽共同研究開発支援…国内外の研究機関、大学、企業による共同研究開発の企画調整や知財管理などを支援する機関等
▽ビジネス支援…人材派遣や市場開拓、レンタル研究室などのサービスを提供する企業や機関等
■国際交流生活エリア
【交流居住地区】
ILC国際研究所や参加研究機関などの研究者・家族らが日常生活を営む地域。通勤の利便性を考え、中核研究拠点に車で30分圏内であり、既存市街地にも近い地域を見込む。ただし、地元住民との日常的交流を重視するという点から、近接する既存市街地にある住居も十分に活用する。
「交流居住地区」で2100戸、既成市街地で900戸程度の供給を見込む。
《考えられる施設・機能》
▽郊外型一戸建て住宅…上級職員・研究者・技術者で4人以上の家族世帯を想定。自然に恵まれ、ゆとりのある敷地と建物床面積
▽市街地型一戸建て住宅…一般職員・研究者・技術者で2~4人の家族世帯を想定。日本国内の標準的郊外住宅と同水準。タウンハウス形態も含む
▽市街地型低・中層集合住宅…一般職員・研究者・技術者で単身や2人世帯を想定。環境や景観に配慮し、個室型、寄宿舎型の形態を想定
【コミュニティーセンター】
世界各国の研究者・技術者、家族等に対応できる▽医療▽育児▽教育▽文化▽情報▽スポーツ・レクリエーション▽生活支援――などを提供する空間。なお、研究者の配偶者に対する就業機会や交流機会の場を設けることも、コミュニティーセンターや地域全体で考慮する。
《考えられる施設・機能》
▽医療…多言語対応医療機関(必要診療科目は内科、小児科、歯科、眼科、外科、耳鼻科で外国語に堪能なスタッフを備える)
▽育児・教育…国際教育機関(インターナショナルスクール)、育児支援サービス(ベビーシッター、託児施設、保育施設等)
▽文化・情報…外国語による情報提供(各国のTVニュースや番組、新聞、雑誌、書籍等)、多様な宗教に対応する礼拝環境、輸入食材店や雑貨店・飲食店、芸術文化施設
▽スポーツ・レクリエーション…屋内外スポーツ施設など
▽生活支援…外国人向け行政手続き、多言語による生活情報の提供、多言語案内標識などの整備など
▽就業…研究者らの配偶者のための就業機会(学校、ボランティア団体、企業など)
▽国際交流…外国人と日本人が交流するイベントの開催など