“星のゆりかご”起源に迫る
“星のゆりかご”起源に迫る
国立天文台水沢キャンパス=水沢星ガ丘町=に設置された天文学研究専用スーパーコンピューター(スパコン)「アテルイⅢ」が、星や星団が生まれる“星のゆりかご”の起源解明に成果を上げた。九州大学と名古屋大学の研究グループが、巨大な星や星団が形成される空間「ハブ・フィラメント系分子雲」の成り立ちをシミュレーションで再現。アテルイⅢは2024(令和6)年12月から本格稼働しており、同天文台が報道発表した研究成果としては稼働後初の事例となる。研究論文は今年3月18日付の米国の学術専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』に掲載された。
(児玉直人)
国立天文台水沢に設置の「アテルイⅢ」用い成果
分子雲とは、星の材料となる低温で高密度のガスやちりが集まった空間。このうち、大質量星や星団が生まれる場所として注目されているのが「ハブ・フィラメント系分子雲」だ。複数の細長い糸状構造(フィラメント)が、中心に向かって放射状に伸びる特徴を持つ。
これまでの研究では、超新星爆発などによって宇宙空間に生じる強い圧縮の波「星間衝撃波」によって、フィラメント状の分子雲が形成されると考えられてきた。一方、それらがどのように集まり、中心部へ向かうハブ構造を形成していくのかは未解明だった。
研究グループは、分子雲が重力の影響で“砂時計”のように中央がくびれた磁場構造を持つ場合があることに着目。そこへ高速の星間衝撃波が衝突した際に何が起きるのかを、アテルイⅢを使って計算した。
その結果、衝撃波によって集められたガスが磁場に沿って流れ込み、筋状に分かれながら中心へ向かって放射状に伸びる構造が形成されることが分かった。研究グループは、実際に観測されているハブ・フィラメント系分子雲の特徴をよく再現できたとしている。
国立天文台は今回の成果について「銀河の中で、星や星団がどのような場所に、どのような条件の下で生まれるのか理解を深めることにつながる」などと説明している。
アテルイⅢは、2024年8月まで稼働していた「アテルイⅡ」の後継機として導入された天文学研究専用スパコン。性能の異なる2種類の計算システムを備え、研究内容に応じて使い分けられるのが特徴で、データ転送速度や計算処理能力も向上した。
同天文台天文シミュレーションプロジェクトによると、アテルイⅢを用いた研究論文は既に複数発表されているが、広く一般向けに公表した成果は今回が初めてという。