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円形加速器 優先候補に(CERN理事会、欧州素粒子戦略を改定)

円形加速器 優先候補に(CERN理事会、欧州素粒子戦略を改定)

円形加速器 優先候補に(CERN理事会、欧州素粒子戦略を改定)
奥州市水沢の水沢駅通りに掲げられている、ILC誘致実現を呼びかける垂れ幕

 欧州原子核研究機構(CERN)の理事会は5月22日付で、「欧州素粒子物理学戦略2026年改定版」を正式採択。現在、CERNで運用している大型ハドロン衝突型加速器(LHC)に続く次世代の旗艦計画として、将来円形衝突型加速器(FCC-ee)を優先候補に位置付けた。一方、岩手県南部の北上山地が有力候補地とされる国際リニアコライダー(ILC)を含む線形加速器構想は戦略の中心には据えられず、ILCという文言も記載されなかった。
(児玉直人)

「ILC」記載されず

 同戦略は、欧州(ヨーロッパ)の素粒子物理学分野における研究開発の行程や優先順位を定めるもの。今回は2020(令和2)年以来の更新となる。ILCの日本誘致、北上山地誘致を求めている関係者の間では、ILC計画の実現を左右するものと認識。「誘致判断を占う大きな節目」と捉えていた。
 FCC-eeはILCと同様、電子と陽電子を衝突させる加速器。CERNが拠点を置く、ジュネーブ近郊(スイスとフランスの国境地帯)の地下に、JR山手線=東京=の大きさに相当する円形加速器を整備する構想だ。
 CERN公式ホームページで公開している改定版戦略文書には、FCC-eeを「次期旗艦加速器の優先選択肢(preferred option)」と明記。さらに、FCC-eeの実現が困難な場合は、縮小版のFCC-eeを優先代替案とした。
 一方、ILCのように直線状に加速器を配置する「線形加速器」についても検討。CERNに建設することを想定した線形加速器施設「LCF」やコンパクトリニアコライダー(CLIC)など他の構想についても検討したが、物理成果の広がりや精密測定能力、将来的な発展性などを総合評価した結果、FCC-eeが優位となった。
 ILCを巡っては、岩手県や宮城県、経済団体などが誘致活動を継続。5月11日には、両県の県議会ILC議連が、体制を整え再始動した国会のILC議連(会長・大野敬太郎衆院議員)などに実現を求める要望書を提出している。今年秋以降には、岩手県が中心となり「首都圏シンポジウム」を計画している。
 今回の改定でCERNは、昨年に完了したFCCの実現可能性調査を踏まえ、国際的な資金調達などに関する協議を進める方針も示している。CERN理事会は28年ごろまでに、国家・国際プロジェクトとして本格始動させるかどうかを判断する見通しだ。
 CERN理事会のコスタス・フォタンス理事長は「FCC-eeは、今後数十年にわたりCERNの衝突型加速器物理学と技術分野における世界的主導的地位を維持するための優先旗艦計画として位置付けられた。2028年の判断時期に向け、理事会決議の実現が進むことを期待している」とコメントしている。
 承認されれば、その後は詳細設計や建設準備が本格化し、2040年代前半の運転開始を目指す考え。今後の国際的な研究体制や大型加速器計画の議論にも影響を与える可能性があり、ILC実現を取り巻く国際環境にも変化が生じる可能性がある。