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天文台水沢保存の臨時緯度観測所本館 日本天文遺産に認定
天文台水沢保存の臨時緯度観測所本館 日本天文遺産に認定
公益社団法人日本天文学会(井田茂会長)は17日付で、国立天文台水沢VLBI観測所=水沢星ガ丘町=敷地内の臨時緯度観測所本館(現・木村榮記念館)を本年度第7回日本天文遺産に認定した。2017(平成29)年には国の登録有形文化財にも選定されているほか、館内に展示している眼視天頂儀1号機なども20年度の同遺産に認定されている。同館は隣接する奥州宇宙遊学館とともに、毎週火曜日を除き一般公開されている。
臨時緯度観測所は1899(明治32)年9月に開所。地球の緯度変化に関する国際共同研究のため、北緯39度8分上に設けられた世界6カ所の観測施設の一つ。初代所長に木村栄博士(1870―1943)が就任した。開所時点で本館は完成しておらず、水沢日高小路の旧安倍家住宅に一時的な事務所機能が置かれた。本館完成は1900年3月。現在のVLBI観測所本館(3代目本館)付近に、玄関を北向きにして建てられた。
初代本館を拠点に木村博士は、地球の緯度変化を示す数式に用いられる「Z項」を発見。日本人による天文学への初めての画期的な貢献となった。1920年に臨時緯度観測所は緯度観測所となり、翌年に2代目本館(現・奥州宇宙遊学館)が完成するまで、初代本館は観測所の中心的な建物として機能した。曳家(ひきや)や修復を繰り返し、現在地に移設された。
同学会は「Z項発見がなされ、緯度観測に関するさまざまな研究が実施された貴重な建物。当時の所長室、観測装置なども展示され、天文学の普及に貢献している」などと認定理由を説明。建物を管理するVLBI観測所の本間希樹所長は認定を受け、「明治時代から現代まで水沢の地で続く天文学研究について知っていただく機会になることを願っている」とコメントした。