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ILC計画、政府全体で誘致推進を(岩手、宮城両県の関係者が文科省、自民党などに要望)

ILC計画、政府全体で誘致推進を(岩手、宮城両県の関係者が文科省、自民党などに要望)

ILC計画、政府全体で誘致推進を(岩手、宮城両県の関係者が文科省、自民党などに要望)
鈴木俊一・自民総務会長(前列右から3人目)に要望書を手渡す達増拓也知事(同4人目)=東京の自民党本部

 北上山地が有力候補地とされている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致を目指している岩手、宮城両県の関係者は13日、文部科学省や自民党本部を訪れ、国家プロジェクトに位置付け政府全体で誘致を推進するよう求めた。この中で自民党の鈴木俊一総務会長(衆院岩手2区)は、文科省の有識者会議が指摘した課題について「(同会議の)議論を上書きするようなことが今は必要だ」と述べ、これまでに解決できた項目を広く発信し、研究者の取り組みをサポートしていくべきとの考えを示した。ILCの日本誘致を巡っては、他計画の台頭などで実現の厳しさを指摘する声もある中、要望に当たった岩手県の達増拓也知事は「希望が持てる」と述べた。
(児玉直人)

 要望活動には達増知事のほか、倉成淳・奥州市長、内舘茂・盛岡市長、佐藤善仁・一関市長、渕上清・大船渡市長、鈴木厚人・岩手県立大学長、伊藤哲也・宮城県副知事ら計人が参加。文科省、自民党本部のほか、内閣府と復興庁を訪問した。
 要望内容は、(1)関係省庁が連携して取り組む国家プロジェクトへの位置付け、政府全体で推進 (2)政府が主導し国際的な議論を推進 (3)研究開発に必要な予算措置を講じる――の3項目。
 文科省で野中厚副大臣への要望を終えた達増知事は、同省の会議室で報道陣の取材に応じ、今回の活動を総括。鈴木・自民総務会長は他分野研究者らを交えて実施した文科省ILC有識者会議が2022(令和4)年に取りまとめた議論や課題等の指摘について言及したといい、「課題などを指摘されたが一定の時間が経過し、技術開発も進んでいる。有識者会議での議論を上書き(更新)するようなことが今必要である」と述べたと紹介した。
 達増知事は鈴木総務会長の言葉を受け、「大変心強い。課題になっていることについては、特に技術的な部分はクリアされていると、(素粒子物理学の)専門家である鈴木県立大学長の見方もある。有識者会議の議論の上書きという今後の方向性をいただくことができ、大変希望が持てる」と所感を述べた。
 ILCを巡っては、スイスのジュネーブ近郊にある欧州合同原子核研究所(CERN)にILCのような線形加速器実験施設を整備する案や、大型の円形加速器「FCC-ee」の建設案も検討されている。一方、中国では独自に大型円形加速器を建設する計画がある。
 今年から来年にかけ、欧州素粒子物理戦略の策定作業が進む中、達増知事は「ILCという選択肢が無くなってはいけないとの問題意識は持っている。過去に指摘された課題を乗り越え、『やはり日本にILCを造るのが一番』という形が見えてくれば」と希望した。