ILC誘致、海外他計画の動向注視(奥州市推進協で岩手県担当が講演)
ILC誘致、海外他計画の動向注視(奥州市推進協で岩手県担当が講演)
「待ち」姿勢に会場から注文
岩手県ILC推進局の葛尾淳哉理事心得は10日、奥州市役所江刺総合支所で開かれた市ILC推進連絡協議会(会長・倉成淳市長)で講演。北上山地が有力候補地とされている素粒子実験施設・ILC(国際リニアコライダー)について、「海外の他計画の動向を注視しながら、国民理解や受け入れ態勢の構築に向けた取り組みを継続したい」と述べた。これに対し、聴講者の一人が「状況を注視する待ちの姿勢では、何もならない」と注文した。
葛尾理事心得は、ILC計画の概要やこれまでの流れを中心に振り返り、欧州は「FCC-ee」、中国では「CEPC」と呼ばれる、いずれも大型の円形衝突型加速器の建設計画を打ち出していると説明。「FCC-eeは予算が、CEPCは人材確保がネックとなっている。現在、欧州は次期素粒子物理戦略を策定中だが、草案が出来上がる前に何とかILCの文言を入れてほしいと研究者は動いている」と述べた。
「県や地元が研究開発や国際協調を図ることは難しい。海外の動向を踏まえていろいろな可能性を考え、研究者と連携しながら受け入れ準備や国民理解を着実に進めたい」と語り、奥州市の誘致関係者に引き続き協力を求めた。
これに対し、国立天文台名誉教授でNPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの大江昌嗣副理事長は「待っているだけでは何もならない。(取り組み姿勢が)甘いのではないか。研究者を集め、何が足りないのか議論して作戦を立てるべきだ」と指摘。別の聴講者からは、米・トランプ政権下における研究支援の現状についての質問もあった。
同日は講演に先立ち同連絡協の総会が開かれ、本年度事業計画などを可決。昨年度とほぼ同様の内容で啓発活動などを展開する。
(児玉直人)