火星圏への旅 準備進む(MMX計画、水沢の研究者たちも参加)
火星圏への旅 準備進む(MMX計画、水沢の研究者たちも参加)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主導する火星衛星探査計画(MMX)。火星の衛星「フォボス」に探査機を着陸させ、表層物質を採取して地球に戻ってくるミッションで、打ち上げから帰還まで5年を要する。国立天文台水沢キャンパスに拠点を置くRISE(ライズ)月惑星探査プロジェクトもMMXに参加。探査機に搭載するレーザー高度計「LIDAR(ライダー)」の開発に携わっているほか、松本晃治准教授(57)が測地学科学戦略チーム(S-SST)のリーダーを務める。
(児玉直人)
RISEにとって月探査機「かぐや」、小惑星探査機「はやぶさ2」に続くミッションとなる。松本准教授が指揮を執るG-SSTは、MMX探査機が現地で高精度観測したフォボスの地形データなど、他のプロジェクトメンバーと協力しながら探査機の着陸地点を選定する際に必要な情報の一部を提供。ミッション成功を支える重責を担う。
LIDARは、千葉工業大の千秋博紀主任研究員が中心となり開発。過去の探査衛星でもレーザー高度計開発に携わってきたRISEだが、今回は測距範囲が100m-100kmと広範になる。「はやぶさ2」は25km程度だった。
松本准教授は「しっかり準備をして臨みたい」。共に任務に携わる野田寛大助教(55)も気を引き締める。
フォボスはこんな衛星だよ
火星には「フォボス」と「ダイモス」という二つの衛星がある。地球で言う「月」みたいな存在だよ。
月は直径約3500kmで、地球から約38万kmも離れているけど、フォボスは大きさが直径約20kmぐらいしかなく、火星表面から6000kmしか離れていない。つまり、小さなフォボスには探査機を安定的に周回させるほどの重力がなく、さらに火星に近い場所に存在しているため、むしろ探査機は火星の重力の影響を受けやすくなる。月探査のように、探査機が目標の天体の周りをぐるぐる飛ぶのが難しいんだ。
一方で、月が常に地球に同じ面を向けて回っているように、フォボスも火星に同じ面を向け公転している。この特徴を利用し、MMXではフォボスの火星周回軌道よりも少しずれたQSO(擬周回軌道)という軌道をMMXは通り、フォボスを見続けるようにして飛ぶんだ。そうすると、火星を1周しているうちに、フォボスの全体を安定的に観測できるんだよ。
打ち上げ時期について
MMX探査機は日本のH3ロケットに搭載し、2026(令和8)年度中の打ち上げを見据えている。ところが昨年12月22日、準天頂衛星システム「みちびき5号機」を搭載したH3ロケット8号機が打ち上げに失敗。JAXAの山川宏理事長は同日の会見で「徹底的な原因究明と対策に全力で取り組み、早期の打ち上げ再開に向けて集中したい」と話している。
MMXはもともと、2024年度に打ち上げる予定だった。しかしH3ロケット初号機の打ち上げ失敗を受け、スケジュールを変更。火星と地球との位置関係も踏まえ、2年延期の2026年度となった経過がある。