TOPIC

【トピックス】ILCはグローバル計画(浅井祥仁氏に聞く)

うみへび座銀河団で謎の電波放射を発見(国立天文台水沢など)

うみへび座銀河団で謎の電波放射を発見(国立天文台水沢など)
うみへび座銀河団で新発見された電波放射(オオコウモリと記された長方形内)。「NGC3309」などと書かれた場所には、銀河団を構成する銀河がある=(C)Kurahara et al.

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)と、名古屋大学大学院理学研究科に所属するメンバーによる研究チームは、うみへび座銀河団で謎の電波放射を発見した。デメリットが多いため、研究者から敬遠されていた低周波数での観測データを新手法で解析したところ、これまで見えなかった電波放射を確認することができた。
 うみへび座銀河団は、うみへび座が見える方向に位置し、地球からの距離は1.58億光年(1光年=約9.5兆km)。157個の明るい銀河で構成される。
 同観測所の蔵原昂平特任研究員=同天文台三鷹キャンパス駐在=らの研究チームは、2010(平成22)年12月にインドの電波望遠鏡を使い338MHzの周波数で観測したデータに着目。「Hz(ヘルツ)」は周波数の単位、「M(メガ)」は100万倍を意味する。
 従来の代表的な電波天文観測では、1.4GHz程度の周波数を使用。「G(ギガ)」は10億倍という意味であり、今回の観測データの周波数(338MHz)は、かなり低いことが分かる。
 低周波数の観測は、人工的な電波を受信する確率が高くなり、不要情報が多いデータになる。分解能も低く、画像化してもぼんやりとした結果しか得られないなど、デメリットが多い。
 今回、あえて低周波数の観測データに着目した理由は、銀河団同士の衝突に関する謎を解明するため。銀河団の衝突を解明することは、銀河団の進化過程などを知る手がかりとなる。
 天体の動きや位置関係などから、うみへび座銀河団では過去数十億年の間に銀河団同士の衝突が起きたのでは――と推測されていた。しかし、周波数の高いX線や宇宙線を観測しても、衝突の証拠が見つかっていなかった。
 蔵原研究員らは、新手法によって低周波数観測のデメリットを克服。銀河団を構成する銀河の間に、新たな電波放射を見つけた。画像化した形状が、飛行するオオコウモリに似ており、「Flying Fox」と名付けた。
 同観測所も関係している国際プロジェクトで、南アフリカとオーストリアで建設が進む次世代超大型電波望遠鏡(SKA)は、低周波数での観測も行われる。蔵原研究員は「今回の解析手法をSKAに適用することで、新たな研究成果がもたらされるだろう」と話している。