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天文学者や現役大学生、科学の魅力伝える(国立天文台水沢で銀河フェス)

日本初 高速電波信号を検出(水沢観測所所属の池邊さん=東大=ら)

日本初 高速電波信号を検出(水沢観測所所属の池邊さん=東大=ら)
臼田観測所の電波望遠鏡がFRBの電波をとらえるイメージ図=(C)東京大学

 東京大学大学院理学系研究科天文学専攻修士課程の池邊蒼汰さん(24)=兵庫県出身=や国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長(51)らは、地球から約13億光年離れた宇宙から届く電波信号「高速電波バースト(FRB)」の検出に、日本で初めて成功した。池邊さんは同観測所にも所属し、本間所長らの指導を受けながら研究を進めてきた。本間所長は「FRBは天文学界で注目を集めている謎の多い天文現象。今後は水沢の電波望遠鏡も使って研究を進めることができたら」と願っている。研究成果は12日付の天文学専門紙「PASJ」に掲載された。
(児玉直人)

指導教官の本間所長「学界が注目する現象」

 FRBは1秒に満たないが非常に激しい電波信号が突然届く現象。2007年に初めて発見された。爆発を意味する「バースト」の呼び名が付けられているが、発生源が銀河系の外にあるため、地球に届いても人体や日常生活、通信環境に影響を与えるようなものではないという。
 どのような天体が発生源になっているか分かっておらず、ブラックホールなどと同様「謎」のベールに包まれており、天文学の世界で注目されている現象だ。これまで100個以上の検出例があるが、いずれも海外の電波望遠鏡によるものだった。
 池邊さんらが観測したのは、おうし座の方向にある天体から発せられたFRB。昨年2月18日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する臼田宇宙空間観測所=長野県佐久市=の電波望遠鏡(直径64m)を用い、日本初の検出に成功した。
 池邊さんや本間所長によると、FRBには同じ天体(発生源)から1回だけバーストが検出される「単発型」と、複数回検出される「リピート型」がある。過去の観測結果では、単発型の方がリピート型より明るいという傾向が示されていた。しかし、池邊さんらが観測したリピート型のFRBは、単発型並の非常に明るい信号を発していることが判明。本間所長は「今まで言われていたシナリオが変わるかもしれない」と語る。
 池邊さんは水沢観測所が運営している天文広域精測望遠鏡(VERA)を使った研究にも取り組んできたが、今年で大学院を修了予定。「研究一筋ということはできないが、FRBの解析に必要なソフトウエアの開発など、何らかの形で今後も携わり、FRBの正体を解明したい」と意気込みを見せている。