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木村栄の書、地域と共に歩んだ証拠(国立科学博物館・馬場幸栄研究員)
国立科学博物館の馬場幸栄研究員は3日、奥州宇宙遊学館(亀谷收館長)で開催中の特別企画展「木村栄(きむら・ひさし)の書展」に合わせ講演。展示されている書の概要を紹介しながら、「木村の書は、天文台が地域の支えによって存在し続けてきた証拠。たとえ破れていたり汚損したりしていても、その歴史的価値が衰えることはない。大切に保管し続けてほしい」と呼びかけた。
(児玉直人)
企画展講演で歴史価値の重要性強調

同展は2日に開幕。同館休館日を除く10日までの8日間にわたり、馬場研究員と胆江日日新聞社の主催で開催している。2日目に実施した記念講演会には、元所員や書の提供者なども含め市内外から50人余りが足を運んだ。
馬場研究員は講演冒頭、国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の前身である緯度観測所の歴史、木村の略歴などを紹介した。
「木村はひたすら研究だけをしていたわけではない。芸術やスポーツが好きな多趣味な人。当時の日本で超有名人だったにもかかわらず、自分だけではなく所員や市民と一緒に楽しむのが好きだった」と馬場研究員。中でも小さなころからたしなんでいた書は特技の一つだったと説明。現存している4歳と8歳の書をスライドに示すと、聴講者からは堂々とした筆跡に驚きの声があがった。
協和学院水沢第一高校(大内誠光校長)が所有する書「温良貞淑(おんりょうていしゅく)」は「心穏やかに素直に、節操を堅く守り、しとやかなこと」という意味。同校は1926(大正15)年創立の清明女学校を前身としており、木村は趣味の謡曲を生徒たちに教えていた関係にあったという。
馬場研究員は「緯度観測所の歴史があるからこそ、現在の国立天文台の存在やブラックホールの撮像成功といった実績につながっている。その歴史は観測所単独で築き上げたものではなく、地域の一部として市民と共に刺激を受けてきたことが大きい」と強調。「書が破れていたり、カビがはえていたりしても木村が書いたという歴史的な価値は失われない。世界に一つしかない歴史的資料として、大切に保管し続けてほしい。修復など不明なことはアドバイスしたい」と述べた。
同展の鑑賞には遊学館の入館料(一般300円、児童生徒150円)が必要。5日は休館日。