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素粒子実験施設 誘致実現へ産学官研究会
宇宙誕生の謎を解き明かす研究施設「国際直線衝突加速器(インターナショナル・リニア・コライダー=ILC)」の誘致の足掛かりとなる、「東北加速器基礎科学研究会」が22日発足する。世界で1カ所だけ整備する同施設の誘致には、日本のほか米国、欧州連合なども意向を示している。日本国内の候補地の一つに、奥州市も関係する北上高地の名前も。研究会を通じ、施設の機能や設置意義など基礎的な知識を得ながら、本格的な誘致活動に向けた、基礎固めを図るとみられる。
きょう仙台市で発足
ILCは、この世に存在する物質の最小単位「素粒子」を用いた実験施設のこと。素粒子のうち「電子」と「陽電子」を高速衝突させ、宇宙誕生直後の状況(ビッグバン)を再現。この実験を通じ、宇宙や物質がどのように誕生したのかを解明する。
現在、世界の素粒子研究機関の間で候補地を検討中で、2020年ごろの稼働を目指している。日本でも超党派国会議員による建設推進連盟が結成されるなど、誘致に向けた動きが出始めている。
実験では、光の速度(秒速約30万km)に限りなく近い状況まで、電子と陽電子を加速させることが必要。また、非常に小さな物質同士が確実に正面衝突できることが求められる。
こうした効果を得るには、31kmから50kmの地下直線トンネルを地盤の強い場所に掘らなくてはいけない。北上高地はこの条件に見合う候補地の一つとされている。
発足させる研究会では、「ILCとは何か」「素粒子とは」とうい基本的な知識を、まずは関係者が習得。誘致に向けた体制構築を図る。
仙台市内のホテルで開かれる研究会初会合の参加者は、東北6県の行政(県レベル)、大学、経済団体の関係者。岩手県からは達増拓也知事、勝部修・県南広域振興局長らが出席する。
経済団体が入る背景には、ILCの建設費用が約8000億円という巨額さであること。また、ILCに関連した各国の研究施設や付属する企業、高等教育機関の集積、そこに携わる人たちと家族の住環境など、かなりの経済効果があると見込まれるためだ。
北上山地を形成する江刺区伊手の阿原山には、国立天文台の江刺地球潮汐観測施設がある。強固な岩盤が観測環境に適しているためで、地底を利用した学術研究施設の整備に最適な場所であることを物語っている。