TOPIC
天文台水沢保存の臨時緯度観測所本館 日本天文遺産に認定
ILC計画 3、4年で詳細設計(KEKの吉岡教授が奥州で講演)
宇宙誕生の解明などを目的にした大規模実験施設「国際直線衝突加速器(ILC=International Linear Collider)」に関する講演会が6日、奥州市文化会館(Zホール)で開かれた。茨城県つくば市にある、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の吉岡正和教授が、ILCの必要性や加速器の成り立ち、計画日程などを説明した。
講演会は、社団法人国際経済政策調査会(岡崎久彦理事長)の第57回「加速器科学研究会」を一般開放する形で企画した。
現時点でILCの建設場所は決まっていないが、江刺区などを含む北上高地の地下が有力候補地の一つとされている。素粒子の研究者や一部の行政関係者が10年ほど前から認知していた。しかし、学界の十分な議論や国際協調を必要とするため、今年に入るまで市民に周知される場面は皆無に等しかった。
このため今回の講演は、有力候補地の地元で一般向けに開かれた最初の関連事業となった。研究が目指す壮大さに加え、建設事業やその後の地域振興に与える効果などに関心が集まり、会場の中ホール(500席)は満席。理数系に興味がある高校生も参加した。
吉岡教授は加速器の役割や開発の歴史、ILCの概要、日本に建設する実現性などを解説した。2013(平成25)年までに、建設方法や機器の量産方法など詳細設計を固める予定で「ここ数年が大変重要な時期になる」強調。「何とかして日本に建設するためにも、国民や自治体の理解が欠かせない」と訴えた。
会場からは「研究成果の応用はどんなことが想定されるか」。「なぜ北上高地の花こう岩岩盤が適しているのか」といった質問が寄せられた。北上高地については、「非常に小さなものを衝突させるため、地盤が不安定ではいけない。広く安定した地盤であれば、必ずしも花こう岩でなければいけないわけではないが、日本でそういう場所を探していたら、たまたま北上高地の花こう岩地盤があった」と説明した。