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【特集】ILC設置の夢求め、奥州商工会議所がKEK研視察
奥州商工会議所はこのほど、茨城県つくば市にある素粒子研究施設・高エネルギー加速器研究機構(KEK)つくばキャンパスを視察。同機構などが推進し、北上高地も有力候補地に挙がっている大規模素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」設置構想に、理解を深めるため勉強会を企画した。
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世界に1カ所だけ設置するILCは、強固な岩盤を有する地下環境が必要不可欠。その条件に見合った土地として、奥州市も含まれる北上高地も候補地に名を連ねている。
視察に参加した同商議所の後藤新吉専務は、「ILC構想は、この地域にとって非常に大事な事案だと思う」との認識を示す。設置に向けた国際協議に支障を与えるような誘致運動はしないまでも、「こうした研究が応用され、私たちの生活にどのように生かされているのか、知るだけでも有意義なこと。これから話し合いにかけるが、数年かけて何らかの理解構築を進める事業を展開してみたい」と意気込んでいる。

■豆知識 「素粒子ってなんだ?」
中学校の理科の教科書に載っていた、「元素周期表」を見たことがある人は多いと思う。アルファベットの大文字と小文字を組み合わせた元素記号が、ずらりと並んだ表である。「水兵リーベ僕の船、なーに間がある、シップはすぐ来らぁ――」という暗記法も有名。「水兵」の「水」は水素原子(元素記号=H)のことで、「兵」はヘリウム原子(He)のことだ。
例えば水は、H₂O という分子の集合体で、水素原子2個と、酸素原子(O)1個でできている。地球温暖化の話題でよく取り上げられるCO₂は、炭素原子(C)と酸素原子2個でできてる物質で、二酸化炭素のことだ。
酸素原子の大きさは1億分の1cmで、とてつもなく小さい。「これ以上、小さな物質はないだろう」とイメージしてしまいがちだ。確かに原子を意味する「アトム」という英語は、「これ以上分けられないもの」というギリシャ語が語源だ。
素粒子という言葉も「あらゆるものを形成している最小の物質」という意味。なので、原子が発見された頃は、「原子が素粒子」と位置付けられていたことになる。
しかし今は、原子自体がさらに小さな物質の集まりによって作られていることが判明している。
原子の中心には「原子核」があり、その周りを電子が飛び交っている。原子核はさらに、中性子と陽子という物質で出来ており、陽子の中には「クォーク」という物質がある。
クォークは性質の違う6つの種類で構成。また、原子核の周りを飛んでいる電子は「レプトン」という物質の1つで、こちらも電子を含め6種類から成る。
現段階では、クォークとレプトンが人類が見つけた最も小さい物質であるため、素粒子とされている。ちなみに、クォークの大きさは1京分の1cm。1京は1000兆の1つ上のけた。
素粒子物理学は、こうした目には見えない物質の性質や謎を解き明かす学問。なぜこのような物質が誕生したのかを解き明かすことは、宇宙誕生の謎に迫ることになる。
もちろん、日常生活とはなかなか結び付かない研究領域。だが、物質の性質や成り立ちが分かれば、今までより高性能の素材を使った機械製品の開発(小型パソコンや携帯電話)、地球環境の変化への対応、治療不能とされた難病の特効薬開発なども可能になってくる。素粒子研究の成果を応用し「手術不要ながん治療」もできるようになった。
人々が安心して便利に暮らせる現在、一見「意味があるの?」という研究が、非常に重要な役割を担っていることがうかがえる。





