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火星圏への旅 準備進む(MMX計画、水沢の研究者たちも参加)

リニアコライダー周知に新たな切り口を

 奥州市江刺区を含む北上高地への誘致が期待されている、素粒子物理学の大規模研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」。ここ数年、計画への関心を高めるための講演会が何度か開催されてきた。しかし、一般の人たちが興味を持つような取り組みは、まだ不足している。誘致には地元の熱意が何よりも必要と指摘する研究者もいるが、そのためにも一般市民の目線に立った切り口による、周知事業が必要との声が出始めている。

実験や生活密接の話題、求められる“市民目線”

 10月2日、東北加速器基礎科学研究会主催の講演会「東北の復興に向けて」が奥州市水沢区で開かれる。震災復興とILCの関係、加速器(コライダー)技術を応用したがん治療などについて話題提供される。同会事務局で、東北経済連合会産業経済グループの有原常裕部長は「応用技術やILCと復興などといった話題で地元の関心を高めることも必要だろう」と話す。
 このように、一般市民がより興味を抱けるような工夫が必要――との声が、ここ最近出始めている。奥州宇宙遊学館の河野宣之館長(国立天文台名誉教授)もその一人。同館は高エネルギー加速器研究機構(KEK)の広報資料を基に、ILC解説パネルを制作した。
 ILC計画が一般に知れ渡るようになって以来、市内では関連する講演会が何度か開かれた。素粒子物理学の基礎や研究の意義、ILCの概要を研究者が説明してきた。
 研究者らは「地元の熱意が必要」と語る。だが、一般市民は日常から科学研究に接しているわけではない。河野館長は「一般の方が、急に難解な事柄を説明されても理解するまで大変。私たちが『翻訳者』の役割を果たさなければいけないだろう」と語る。
 さらに「新たな切り口でILC計画に接することが求められる。例えば、ILCに必要な電力をどこでどのように確保するのかという話も重要なこと」と河野館長。このほか、外国人研究者の定住を見据えたまちづくり、交通環境など、科学研究には直接関係はなくても、住民の関心も高く、より深い議論が求められる事柄がたくさんあるという。
 もちろん、科学的な分野に興味をもつことも大切だ。盛岡市子ども科学館の企画担当者は「ただ話を聞くより、手で触るなどして確かめられるほうが子どもに限らず、一緒に来た大人も理解しやすい」と話す。ただし「ものによっては、予備知識を得てからでないと、理解できない現象もあるだろう」とも話す。
 地元行政の立場からILC計画の周知や調査事業などを担当している、県政策推進室の大平尚政策監は「震災対応などもあり、なかなか『講演会以外の周知方法』まで企画する余力が今はない状況」としながら、「『こういう事業はどうか』などアイデアをいただければ、検討してみたい」と話している。