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加速器でがんを治療、医療への応用など紹介(ILC誘致関連講演会)

加速器でがんを治療、医療への応用など紹介(ILC誘致関連講演会)
加速器技術の医療面への応用について解説する吉岡正和氏

 東北加速器基礎科学研究会と岩手県が主催する講演会「東北復興に向けて」は2日、奥州市文化会館(Zホール)で開かれ、北上高地への誘致が期待される素粒子物理学施設・国際リニアコライダー(ILC)に関連性がある、がん治療技術や震災復興について2人の有識者が話題提供した。
 ILCは強固な岩盤の地下に整備される大規模な研究施設。世界に一カ所だけ作られ、世界中の物理学者やそれにまつわる研究機関が集まり、物質の成り立ちの謎などを解明する。北上高地が有力候補地に上げられているが、経済効果や地域振興などに寄与するとの期待もある。
 この日は、元東京都副知事の青山やすし(※)氏が「東日本大震災からの復興に向けて」、高エネルギー加速器研究機構(KEK)特任教授の吉岡正和氏が「いのちを守る最先端加速器研究科学」と題し、それぞれ講演した。
 このうち、吉岡氏はこれまでも数回、市内で開かれた講演に招かれている。今までは、ILCの構造や研究目的などを中心に話をしてきたが、今回は「より生活に身近な事柄に触れてみたい」と、医療技術への応用について話した。
 そもそもILCは、「加速器」と呼ばれる装置を地下トンネルに一直線に並べ、肉眼では確認できない電子、陽電子といった超微粒子を高速衝突させる施設。衝突による粒子の破壊現象から物質の成り立ち、宇宙誕生の起源を調べる施設だ。
 日常生活とは直接関係ないような印象を受ける施設だが、そこに使われる加速器の技術や、素粒子物理学の研究成果は、さまざまな形で応用活用されている。その一例として吉岡氏が取り上げたのが、がんの治療だ。
 これまでのがん治療は、手術で腫瘍を取り除いたり、抗がん剤投与などの化学療法、放射線を照射しがん細胞を壊す放射線治療などが知られていた。しかし、手術は体力が激しく消耗。放射線治療は根治が難しく、化学療法は局所がんへの有効性が乏しいなど、それぞれに一長一短の面があった。
 吉岡氏が現在進めているのは「ホウ素中性子捕捉療法」と呼ばれる手法。あらかじめ、がん細胞に集まりやすいホウ素を投与した患者に、中性子ビームを腫瘍がある領域に照射すると、ホウ素が集まったがん細胞に中性子が当たり、正常な細胞にダメージを与えず、がん細胞を破壊することができるという。特にも全摘出手術が絶対にできない脳などの部位で、細かく散らばった腫瘍細胞の根絶に役立つという。
 ただ、中性子ビームの発生源に「原子炉」が用いられてきた。安全、安定、簡便さなどの面で原子炉による治療施設の拡大は困難との考えから、吉岡氏は加速器をビーム発生源として用いる手法の普及に努めている。
 吉岡氏は「ILCなどに用いられる加速器の技術をそのまま使う手法。このような形で素粒子研究の技術が応用されていることにも目を向けてもらえれば」と話していた。
 後藤新平と復興について触れた青山氏は、関東大震災における新平の功績などを紹介しながら「新平のような人材を出した水沢、岩手の地から、ILCのようなすばらしいプロジェクトが発信されることを願いたい」と述べた。

※…青山やすし氏の名前の漢字表記は、にんべんを記してつくりの上に八、下に月