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ILC誘致、海外他計画の動向注視(奥州市推進協で岩手県担当が講演)

国の3次補正で5億円(ILC計画推進へ弾み)

国の3次補正で5億円(ILC計画推進へ弾み)
ILCのロゴ

 岩手県の北上山地が国内建設候補地の一つとなっている国際リニアコライダー(ILC)計画について、達増拓也知事は24日、水沢区の講演で「国の第3次補正予算(21日成立)の中に、調査費を中心に5億円が措置された。国が正式に予算措置したのは初めてだ」と明らかにした。県や奥州市などはこれまで、地質調査や講演会など地元主体の取り組みを進めてきたが、国が予算措置したことで計画前進へ弾みがつきそうだ。

達増知事「国の予算措置は初めて」

 県政策地域部などによると、予算は高エネルギー加速器研究機構(KEK)に交付される。KEKが主体になって関連の取り組みを進めるとみられる。
 ILC計画をめぐっては、2012(平成24)年度中に、国内にILC施設を建設する場合の設計(工学設計)が出来上がる見通し。2013年度以降、ILCの建設の可否を含めた判断が出るという。
 県と東北大は昨年、江刺区と一関市大東町で地質調査を実施。ILC施設に必要な地下のトンネル(距離31~50km)を建設できるか、ボーリング掘削により地中の岩盤のサンプルを取り出すなどして調べ、強い岩盤であることが確認されている。
 奥州市内ではILCに関する講演会が数多く開催され、KEKをはじめ一線で活躍する研究者が、ILCを使った研究の重要性を説明。奥州商工会議所は昨年1月、茨城県つくば市のKEKを視察するなど、官民挙げた取り組みも展開されている。

 国際リニアコライダー(ILC)は、物質を構成する最小単位の一つ「素粒子」を超高速で衝突させる実験施設。「電子」と「陽電子」の衝突反応や内部構造を調べることで、宇宙や物質の誕生に迫る。
 実験場所は地下約100mに掘られた直線状のトンネル(距離31~50km)。地上には管理施設や関連研究機関が立地する。建設費8000億円は国際協力で負担される。立地地域にとっては土木・建築・電気などに直接的効果があり、メンテナンス企業の張り付きなどによる地元雇用への期待もかかる。
 日米欧で建設を目指している。北上山地が候補地の一つとされる理由は、地殻震動を受けにくい花こう岩の岩盤が地底に広がっていること、東北最大の都市・仙台市が近郊にあることなど。脊振山地(福岡、佐賀県)も国内候補地で、候補地の国内、国際的な絞り込み方法は未定という。