聞いて納得 歴史や偉業(現役天文台職員がボランティアガイド)
天文台の本間所長「若手の今後に期待」(銀河系中心部、ブラックホール撮影受け)
天の川銀河(銀河系)の中心部にある巨大ブラックホール(BH)の画像公開から一夜明けた13日、国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の地元関係者からもあらためて快挙をたたえる声が上がった。12日深夜に都内で開かれた会見では、同観測所に縁がある若手研究者3人が発表。本間所長(50)は最後に短く謝辞を述べ、将来有望な若手の今後に期待を寄せた。国の研究予算が頭打ち状態で、若手研究者の雇用体制や研究費確保が厳しくなっている中、本間所長は「彼らがさらに活躍できる環境を整えていきたい」と語る。
(児玉直人)
研究費確保厳しい中、活躍できる環境整備が課題
3年前に別の巨大BHの画像が公表された際、水沢菓子組合(千葉亮組合長)はBHをイメージした菓子を会員店舗ごとに開発。現在も好評を得ている。同組合の高橋一隆副組合長(48)は「まさに吉報。早速会員に『これは再びチャンスになる』と伝えた。近く会議をする予定で、何ができるか考えたい」と話す。
水沢羽田町の老舗鋳造業、(株)及富(及川一郎社長)は、BHをイメージした鉄瓶を商品化。同観測所が実施しているクラウドファンディングで、30万円以上の寄付者に贈られる南部鉄器製おちょこ(限定品)の製造も手掛けている。同社の菊地章専務(65)は「経済が冷え切っている中、熱い情熱を持って研究している皆さんの思いが、人々の心を温めているように感じる」と快挙をたたえた。
倉成淳市長は「歴史的な快挙にとても驚き、感動している。地域をさらに明るくし、喜びや勇気を与えてくれるもので、感銘を受けた子どもたちのチャレンジ精神の高まりに期待したい」とコメントした。
今回の研究成果の意義について本間所長は、「地球から一番近い巨大BHなので、精密にいろいろなことが分かる。相対性理論の検証など、非常に重要な実験場になるのは間違いない。私たちが住んでいる天の川銀河の中心に存在しており、人類誕生の壮大な絵巻物を描く時、非常に重要な役割を担っているかもしれない」と説明する。
撮影を行った国際プロジェクトチーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」では、多くの若手研究者たちが活躍。12日深夜の会見で成果発表した森山小太郎さん(31)は、数多くの解析画像を最終的にまとめ上げる大役を担った。
兵庫県出身の森山さんは、ドイツのゲーテ大学フランクフルトに博士研究員として在籍中だが、2018(平成30)年から1年間、同観測所で研究活動をしていた経歴がある。「街の中に大きな電波望遠鏡があり、のどかな雰囲気が漂うが、研究者間のディスカッションは非常に活発で刺激を受けた」と回顧。「自分がまとめ上げた画像をあのような大きな会見で発表した瞬間、まさに感無量だった」と話した。
研究資金調達が目標金額に達成
国立天文台水沢VLBI観測所が、若手研究者らの研究資金等を調達するために実施していたクラウドファンディングが12日夜、目標額の1000万円に到達した。現在は次の目標額2000万円を目指しており、引き続き寄付を受け付けいる。6月17日午前11時まで。
銀河系中心部のブラックホール(BH)撮影に関する記者会見を2時間後に控えていた12日の午後8時ごろ、目標金額1000万円に到達。その後も寄付が相次ぎ、13日午後5時現在で1114万4000円が寄せられた。当初目標が達成したため、同天文台は最終的な寄付額を全額受け取ることができる。