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歴史的意義伝える旧緯度観測所、米・ユカイア市長が手紙

惑星食(コラム「時針」より)

 今月8日、皆既月食中に442年ぶりに惑星食が同時に観測されるとあって、通常の皆既月食以上に注目された。ところが、今回の惑星食は太陽系7番目の天王星。肉眼ではほとんど見られない約6等級の明るさのため、観測するには天体望遠鏡や双眼鏡が必要だった ▼皆既月食や金星、火星、土星などの惑星が月に隠れる惑星食は、地球上ではそれほど珍しいことではない。ほぼ日本全国で観測されるのが、1580年7月26日以来ということである ▼国立天文台のホームページによれば、前回の皆既月食中の惑星食(天王星食)は2014年10月8日に起こったが、部分食中に稚内付近でしか見られないということで、あまり話題にならなかった ▼ラジオのトーク番組で、この皆既月食・惑星食のことが話題になった。アナウンサーが「どうせ次回も惑星は見えない」という意味のことを言った。これを聞いて、歴史的な天体ショーの前、テレビの番組で、「前回、織田信長も見たかもしれません」とアナウンサーが話していたのを思い出した。では、その可能性はあるのだろうか。素朴な疑問がわいた ▼日本の暦では天正8年6月15日。現在の時刻に照らすと、午後7時32分ごろから午後8時44分ごろに、皆既月食・惑星食が起きている。古文書にも月食の記録が明記されており、名のある武将も見た可能性がある。このときの惑星食は土星。現在、同時刻には南の空に木星、東に火星が輝いているが、土星も明るい。当時、晴れていれば、漆黒の空に見事な「土星食」が見られたはずである ▼織田信長がそのとき空を見上げたかどうかは別として、当時46歳。2年後の天正10年6月2日(1582年6月21日)には、明智光秀に急襲され、本能寺で自刃する。ちなみに次回の皆既月食は2025年9月8日。皆既月食・惑星食が日本で同時に見られるのは、322年後の2344年7月26日。前回と同じ土星食である。
(史)