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技術開発を優先的に(ILC推進で新組織立ち上げへ)

技術開発を優先的に(ILC推進で新組織立ち上げへ)
ILCのロゴ

 北上山地が有力候補地とされる素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現を目指す素粒子物理学者らは、実験装置の技術開発を行う新組織「ILCテクノロジーネットワーク(ILC TN)」を立ち上げる。国内外の研究所の連携体制を構築し、重要度の高い技術課題の解決などを優先的に進める考えだ。
(児玉直人)

 研究者側は当初、早ければ本年度中にも日本誘致を前提とした準備研究所(プレラボ)開設を想定していた。しかし、文部科学省ILC有識者会議は今年1月、日本誘致を前提としたプレラボの設置は「時期尚早」との見解を提示。研究開発戦略の練り直しが求められていた。
 特に施設設計などいわゆる「サイト問題」は、建設場所が定まっている上で進められるもの。研究者側は本県南部の北上山地を有力候補地と位置付けているが、日本政府が正式に認めたものではない。国際的な費用分担などの枠組みが見えない限り、サイト問題には手を付けられない状況にある。
 研究者側は「ILC TN」を立ち上げ、実験装置の技術開発や課題解消など、サイト問題に依らない部分の取り組みに当面は力を入れていく。財政難や新型コロナウイルス、ウクライナ情勢などもあり、政府間協議開始の見通しは不透明。そんな状況の中、当該分野の研究や技術開発の流れを停滞させたくないとの思いもうかがえる。
 「ILC TN」では、プレラボで実施する予定だった作業のうち▽電子と陽電子の粒子を光速状態にまで加速する「超電導加速空洞」▽陽電子の発生装置▽粒子ビームの絞り込み――に関する課題に取り組む。ILCを推進する国内研究者組織「ILC-Japan」、高エネルギー加速器研究機構などが中心となり、世界の研究所が連携して活動していく。
 ILC-Japanで共同研究部門座長を務めている、広島大学大学院の栗木雅夫教授は「本当は立地に関する取り組みも進めたいが、そこにまだ着手できない現状がある。技術開発などやれるところから優先的に進めていこうとなった」と説明している。