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さらなる研究成果、水沢の望遠鏡でも
国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が運用する「天文広域精測望遠鏡(VERA)」に、新しい受信機を搭載しての試験観測が12日夕から夜にかけ行われた。ブラックホール(BH)のより詳細な観測を可能にする装置で、地球規模の観測地点に水沢の電波望遠鏡が仲間入りする日もそう遠くはない。担当する同観測所の秦和弘助教(39)は、「地域の皆さんにより親近感を持ってもらえるような成果を発表できる日を目指したい」と意気込む。
(児玉直人)
国立天文台の秦和弘助教ら新受信機使い試験観測
VERAに搭載されたのは、波長3.5mm帯の電波を受信する装置。大阪公立大学と共同開発した。試験観測では、同じ波長に対応できる韓国2カ所の電波望遠鏡と連動させ、オリオン大星雲などに焦点を合わせた。
観測は午後5時から同8時まで実施。問題なく受信できているかが分かるまでには、データ処理の関係上、1カ月弱かかる。
国内4カ所にあるVERAは、7mmなど3種類の波長に対応。しかし、本間所長や秦助教が昨今関わっているBH研究では、3.5mmなど波長がさらに短い電波を受信できる望遠鏡を使用している。いずれもヨーロッパや南北アメリカ大陸など海外にある。
だが欧米の観測網だけでは、観測不能な時間帯が生じる。秦助教は「アジアで3.5mm受信ができるようになれば、BHを24時間観測し続けることが可能」と導入メリットを説明。BHの動画や高画質の静止画が得られ、謎だらけの天体の構造の解明が進む可能性が広がる。
研究成果面への期待だけではない。日本人、特に水沢に関係する研究者が多く携わっていながら、記者会見などで「日本や水沢の電波望遠鏡は使われていない」と話すことに秦助教自身、一抹の寂しさを感じていた。
「アンテナ本体だけでなく、水沢上空の大気の状態が本当に3.5mm帯の観測に向いているのか、徹底的に調べた。アンテナの鏡面に問題はなく、大気も予想以上に良かった」と秦助教。「将来、大きな研究成果を発表する中で『水沢でも観測が行われた』となれば、地域の皆さんが一層親しみを感じてくれるのではないかと思う。うまく軌道に乗るよう頑張りたい」と話している。
6月には石垣島のVERA局にも3.5mm帯受信機を取り付ける予定。今後、受信機の性能向上を図る際には、同観測所が昨年実施したクラウドファンディングで得た資金の一部を活用する方針だ。