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ブラックホールの活動期捉える
ILCでまちづくり(岩手県の推進本部、関係自治体に促す)
北上山地が建設有力候補地とされている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致促進を目指している県は15日、推進本部会議を開き、本年度の取り組み内容を決めた。国への働きかけやILC推進派の素粒子物理学者らへの支援、国民的な機運醸成などを継続。県と同一歩調で誘致活動に当たっている奥州市など県南部の関係自治体に対しては、ILC誘致を契機とした魅力あるまちづくりを促す。
(児玉直人)
本年度推進策決める
県庁3階第1応接室で開かれた会議には、推進本部長を務める達増拓也知事や幹部職員らが出席。研究者サイドを中心とした直近の動向や、県が対応した昨年度の取り組み実績について報告があった。
昨年2月、文部科学省のILC有識者会議は、研究者サイドが提唱するILC準備研究所(プレラボ)の設置について「時期尚早」とする議論のまとめを公表。技術的課題を解消する取り組みと、施設設計など立地に関する課題(サイト問題)を切り離すべきだとしていた。これを受け、研究者サイドは実験装置の技術開発を行う新組織「ILCテクノロジーネットワーク(ILC TN)」の立ち上げに向けた準備を進めている。
一方で県は、県内外の推進団体とともに国民的な機運醸成を図りながら、日本政府主導による国際的議論が進むよう、引き続き国や政府与党に働きかける方針。有識者会議から立地に関する事柄の切り離しを提唱されてはいるが、研究者の活動を後押しし、政治判断に期待しながら誘致実現を目指す姿勢に変わりはない。
研究者支援の一環として、関係自治体に対してはILC誘致を契機とした魅力あるまちづくりの推進を促す。昨年度、岩手大学と東北ILC事業推進センター、先端加速器科学技術推進協議会(AAA)が共同策定した「まちづくりのモデルケース」を活用し、地域実情に沿ったまちづくり像を検討してもらう。
理解普及啓発の関連では、県内の小中高生を対象にILCを含む科学への関心を喚起する取り組みも継続。科学講演会や出前授業を実施する。
達増知事は「新型コロナに関係する規制が解除され、多様な活動が再開している。機運醸成を図り、国家プロジェクトとして動いてもらえるよう、全庁的に取り組んでいきたい」と力を込めた。