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絶やすまい謡曲文化(木村栄博士が普及)

絶やすまい謡曲文化(木村栄博士が普及)
『平家物語』の屋島の戦いを基にした作品『八島』を披露する水沢宝生会

 第48回奥州市謡曲大会が28日、水沢東町の水沢グランドホテルで開かれた。水沢地域の謡曲文化は、水沢緯度観測所(現・国立天文台水沢VLBI観測所)の初代所長・木村栄博士が普及に尽力した経過もあるが、近年は若い世代へ広がらず愛好家団体にとって高齢化が最大の悩みという。新型コロナの影響による3年連続中止を経ての再開、さらには会場変更も余儀なくされる中で開催した4年ぶりの大会。木村博士が根付かせた文化を絶やすまいと、参加者たちは日ごろの稽古の成果を存分に発揮していた。

4年ぶりに大会(奥州市能楽連)

 水沢観世会(観世流)、水沢喜多会(喜多流)、喜嚶会(同)、水沢宝生会(宝生流)の3流派4団体で構成する市能楽連盟が主催。市芸術文化協会が後援した。
 能では主役を「シテ」といい、シテを主に演じる人たちのグループを「シテ方」と呼んでいる。市内で活動する4団体は、いずれもシテ方の流派。このうち水沢宝生会は、木村博士が創設した団体だ。
 緯度観測所の歴史について調べている国立科学博物館の馬場幸栄研究員によると、多趣味な木村博士は水沢地域での謡曲普及にも取り組み、明治40年代前半に駒形神社第11代宮司・當山亮道氏と共に同会を創設したという。他会も伝統ある文化を継承してきているが、若い世代への浸透が難しくメンバーの高齢化が著しい。
 同大会は例年、水沢大手町の後藤伯記念公民館で開催しているが、同公民館が老朽化による安全性の問題で今年4月から全面休館。会場を同ホテルに変えて開催した。
 この日は11演目を披露。出演者らは独特の調子で朗々と謡い上げた。水沢観世会の石川利昭さん(68)=江刺愛宕=は「1973年に始まった大会。若い人の加入がなかなかないが、謡曲文化の火を消さないよう頑張っていきたい」と話していた。
(児玉直人)