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実在するの?「宇宙人」(胆江ゆかりの研究者も注視)
地球外知的生命体を探査するプロジェクト「SETI(セチ)」が、学術分野の垣根を越えて盛り上がり始めているという。国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長(51)も、SETIに興味関心を抱く一人。さらに胆江地区に縁のある文化人類学者で、米国人のジョン・トラペーガン氏(61)も関連論文を複数発表するなど、文系分野からもSETIに注目が集まっている。
(児玉直人)
地球外知的生命体の探査プロジェクト
SETIは地球外知的生命体探査(Search for Extra Terrestrial Intelligence)の略。人類と同等、またはそれ以上の文明や能力を持った知的生命体がいるという仮定の下、彼らが発している電波を地球上で受信し、その存在の有無を確かめる試み。いわゆる「宇宙人探し」だ。

本間所長によると、1995年に太陽系外惑星が発見されて以降、盛り上がり始めてきた研究分野。かつては雲をつかむような印象があり、「SETIを研究テーマにしている」と口外したものなら、偏見の目が向けられていたという。しかし、現在では科学的なアプローチ方法によって、真剣に研究が進められている。同観測所が運用する天文広域精測望遠鏡(VERA(ベラ))でも、通常の天体が発する電波とは異なる強烈な信号の有無を調べている。
このSETIに関する研究を文化人類学の観点から注目しているのが、テキサス大学東アジア研究所長などを歴任したトラペーガン氏だ。水沢真城地区に滞在して農村社会を研究し、2018年に奥州市勢功労者表彰を受けた米国人文化人類学者、キース・ブラウン氏=ピッツバーグ大学名誉教授=の弟子に当たる。トラペーガン氏自身も民俗学研究のため水沢や金ケ崎町内に滞在経験があり、その縁で同町の女性と知り合い結婚。奥州市国際交流協会の関係者とも親交がある。

現在はアリゾナ州立大学のフェロー(研究員)として、10年ほど前からSETI関連の研究に従事。異文化研究で得られた見識を、さらにスケールが大きい宇宙の世界でどう生かすことができるのか探っている。「もし、宇宙からのメッセージを受け取ったとき、われわれはどう行動すべきなのか。文化人類学者として非常に興味がある」と語る。
映画で描かれるようなファンタジックな世界に人々の興味が高まり、夢と期待を膨らませるかもしれない。しかし、注意すべき点も多い。トラペーガン氏は「地球外知的生命体に積極的にメッセージを送る『METI(メチ、Messaging to Extra Terrestrial Intelligence)』は非常に問題がある」と指摘する。
METIについて本間所長は「相手は平和的な考えを持っているのか、人類以上の高等技術を持っているのか全く分からない」と説明。かつてこのような情報発信がされた例があり、人類滅亡に近づく行為だと批判されたこともあったという。
海外では資産家がSETIの取り組みに対し投資する動きもみられる。「SETIが成功すれば、人類にとって最大の大革命になる。天文学だけでなく、社会学や言語などあらゆる学術分野が一気に増えるだろう。それだけインパクトが大きいし、一大政治案件にもなり得る」と本間所長。「仮に知的生命体が見つからなかったら、地球の存在がそれだけ尊いものであり、人類の在り方を見つめ直すチャンスにもなる」と話している。