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ブラックホールの活動期捉える
ILC誘致活動 地域一体で(鈴木県立大学長、有識者会議報告に憤り)
東北ILC事業推進センター代表を務める県立大学長の鈴木厚人氏(素粒子物理学)は10日、水沢東町の水沢グランドホテルで、北上山地が有力候補地とされる実験施設ILC(国際リニアコライダー)について講演した。誘致に慎重姿勢がにじみ出た文部科学省ILC有識者会議の報告に対し、「日本への期待が沈下した」と憤りを示した。鈴木氏は「地元はしっかり受け入れに向けた準備を進めているという姿勢を示せば、世界は応援してくれる。地域が一体となった活動を進めていきたい」と力を込めた。
(児玉直人)
同センターは2020(令和2)年8月に設立。東北ILC推進協議会の内部組織だった「東北ILC準備室」を発展解消し、ILC受け入れ環境整備を具体検討している。胆江2市町を含む岩手県南、宮城県北の17市町や岩手・宮城両県、大学機関など23団体から成る。
同日はILC計画現状説明会として、構成団体となっている自治体の関係者ら約30人が出席。この中で鈴木氏は、ILCの最新動向について語った。
鈴木氏はILC誘致運動の経過を振り返りながら、2022年2月14日付でまとめられた文科省ILC有識者会議の報告内容を批判。▽ILCプレラボ(準備研究所)段階への移行は時期尚早▽今後の見通しを明確にするような大きな進展は見られない――とした部分に関しては、「現実を無視する判断」と指摘した。
このほか、建設場所に関わる問題を切り離し、当該分野の技術開発を進めるべきだという助言には、「ILC日本誘致は、国家プロジェクトとして幅広い意義がある。政治や民間、地域、学界が一致協力して20年以上に及ぶ活動を展開してきた」と強調。「ILCの意義やこれまでの国際推進の経緯、実績を無視したものだ」と不満をあらわにした。
「一緒に日本誘致に期待して進めてきた海外研究者たちも、有識者会議の報告は相当ショックだった。米国の将来計画から『ILC in Japan』の文字がなくなり、米国への建設も検討すべきだとの議論が行われた」と鈴木氏。「再びオールジャパンの体制を構築し、地域から日本の未来を切りひらくつもりで、積極的に推進したい」と強調した。
説明会では、同センター事務局長の大平尚・県ILC推進局コーディネーターが、同センターの活動状況を紹介。(株)NTTファシリティーズの平井貞義氏が、ILCを契機にしたまちづくりに係る共同研究について報告した。