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ILC誘致、政治学的観点で語る(笹川財団の角南理事長)

ILC誘致、政治学的観点で語る(笹川財団の角南理事長)
ILC日本誘致の意義について語る笹川平和財団理事長の角南篤氏=一関市内

 笹川平和財団理事長の角南篤氏は6日、一関市内で講演した。県や県南の自治体、国内の素粒子物理学者らが日本誘致を目指している実験施設、国際リニアコライダー(ILC)を実現させる意義について、政治学や地政学の観点から持論を展開。「皆さんの力でILCを含め、新しい日本をつくっていくことで、世界における日本の存在感を高めることにつながる」と強調した。
 角南氏は、ILC実現建設地域期成同盟会(共同代表=佐藤善仁一関市長、倉成淳奥州市長、菅原茂宮城県気仙沼市長)が主催する講演会に招かれた。講演には誘致団体に加盟する自治体や企業の関係者ら約170人が出席。冒頭、共同代表の佐藤一関市長は「今日の講演を聞いた皆さん一人一人が、ILCのスポークスマンとして周囲の皆さんに状況を伝えてもらえれば、実現に一歩でも二歩でも近づく」と呼びかけた。
 角南氏は、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)開催中のアラブ首長国連邦のドバイから帰国したばかり。COPに5回ほど出席している角南氏だが、「会場の雰囲気を見ていると、残念ながら日本の存在感は毎年薄くなっているような気がする」と指摘。「本来ならエネルギー、地球環境、海洋などの問題に対し、わが国の科学技術で世界に貢献したいところだが、日本は元気がない。そこへ、中国やインドなどのアジア新興国が存在感を増している。日本はどういう国になっていくのかが、非常に大きな課題だ」と懸念を示した。
 地政学的課題や、国際社会における日本の存在感、科学技術力の向上に関する問題などに対し、ILC誘致がどのような効果をもたらすか解説。角南氏は「次世代を担う理系の若者たちが『科学をやっていて良かった』と思える大きなプロジェクトが必要。しかし、彼らの未来につながるビッグプロジェクトがない。予算の問題もあるが、世界と組み日本がリードするILCに取り組むことで、こうした現状を脱出したい」と述べた。
 同日は、高エネルギー加速器研究機構の道園真一郎教授が、ILC国際推進チームにおける技術課題解消の取り組みについて、ネット中継で講演した。