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天文台水沢保存の臨時緯度観測所本館 日本天文遺産に認定

天体撮影へ熱き心、ありがとう酒井栄さん(奥州宇宙遊学館で写真展)

天体撮影へ熱き心、ありがとう酒井栄さん(奥州宇宙遊学館で写真展)
酒井栄さんが生前撮影した天体写真の一部を紹介している展示会

 2月28日に死去したアマチュア天文家、酒井栄さん=水沢東大通り=が生前撮影した天体写真の展示会は17日まで、水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館(亀谷收館長)2階セミナー室で開かれている。生前最後の来館となってしまった1月下旬、持参した低緯度オーロラの写真パネルをメインに、彗星や星団など美しい天体写真が並ぶ。天体観測と撮影に情熱を注いだ故人の人柄に触れることができる。
(児玉直人)

私設天文台で笑顔を見せる在りし日の酒井栄さん=2014年撮影

 酒井さんは電気工事業の会社を営む傍ら、水沢黒石町の中山間地に私設天文台を整備。小学生のころに始めた天体観測や写真撮影を、体調不良で入院し始めた1月下旬まで、ほぼ毎日続けていた。同館の指定管理者であるNPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの副理事長なども務めていた。
 月や太陽系の惑星など、おなじみの天体はもちろん、天文の専門雑誌などで最新の情報を入手し、発見間もない彗星や小惑星、珍しい天体現象などにもレンズを向けた。撮影時間は深夜や早朝、また寒さが厳しい真冬になることもよくあった。
 昨年5月には、大規模な太陽フレア(表面爆発)によって発生した「低緯度オーロラ」の撮影に成功。今年1月、同館の定例イベント「サンデースクール」でオーロラを取り上げる機会があり、メインの講師と共にオーロラを撮影した酒井さんも登壇予定だった。
 同館スタッフによると、サンデースクールの打ち合わせのため、写真を持ってきた酒井さんから「体調が悪く、明日から入院する。写真だけ置いていくから」との申し出があったという。これが、長年親しく交流してきたスタッフと顔を合わせた最後の場面になってしまった。1カ月余り後の2月28日、すい臓がんのため72年の生涯を閉じた。
 写真展会場で中央に飾られた3枚の大きなパネルが、最後の来館時に持参したもの。「イーハトーブの夜空を彩るオーロラ」「淡く赤く染まる変化を約6時間連続観測成功!」という文字も添えられている。生まれ故郷でオーロラを撮影できた喜びを爆発させる酒井さんの心境がひしひしと伝わってくる。
 セミナー室での展示は17日までだが、休館日明けの19日以降は展示数を減らす形になるものの、館内に飾る予定という。