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ILC計画、政府全体で誘致推進を(岩手、宮城両県の関係者が文科省、自民党などに要望)

ILC誘致実現、厳しい情勢実感「限られた時間で努力を」

ILC誘致実現、厳しい情勢実感「限られた時間で努力を」
盛岡市の岩手県議会棟(イメージ)

 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の建設計画と北上山地誘致に絡み、欧州の研究施設などを視察した岩手県議会議員4氏はこのほど、視察成果の報告書をまとめた。4氏は視察を通じ、情勢の厳しさやこれまでの誘致活動に対する問題点などを実感。一方で、望みが全くなくなったわけではないとする見解もあり、限られた時間の中で誘致に向け努力する必要があると強調している。

欧州視察の岩手県議4氏が報告

 視察に参加したのは飯沢匡副議長(一関選挙区、いわて県民クラブ・無所属の会)、岩渕誠氏(同、希望いわて)、城内愛彦氏(宮古選挙区、自民党)、佐々木朋和氏(一関選挙区、いわて新政会)。佐々木淳副知事、佐藤善仁一関市長、渕上清大船渡市長、岩手県ILC推進協議会の鎌田英樹副会長らも同行した。
 一行は今年1月26日から2月1日にかけ、ドイツやスイスの素粒子研究施設などを訪問。現地の研究者らと会談し、ILC計画を巡る実情を調査した。
 欧州次期素粒子物理戦略の改訂が来年に控えており、同戦略でILCがどう扱われるかによって、日本への誘致や計画自体の今後が左右される。今年6月にはイタリアで改訂にかかる会議が開かれる予定だ。
 現在、ILC以外の大型計画も浮上しているほか、ILCの欧州建設というアイデアも出ている。
 現地研究者からは「日本で実現してもらいたいが、可能性が薄れている印象」「日本政府からオファー(申し出)が一度もなかった」など厳しい指摘もあった。一方、現時点ではどの計画が最適か見通しが立っていないことや、「岩手でILCに関する活動が行われていることはよく理解している」といった反応もあったという。
 報告書の内容は、このほど開かれた県議会県政調査会で示された。飯沢副議長は「現時点での情勢が大変厳しいものであることを痛感したが、流動的な要素も多い。日本政府の動き方次第では形勢が動く可能性がある」とし、効果的な要請活動を即時進める必要があると強調。岩渕氏は「他計画よりILCは低コストで済み、早期成果が期待されているなど優位性がみられる。日本の動きを加速させることが肝要だ」とした。
 城内氏は「政治的判断ばかり注目された。若い科学者や技術者を集め、東北大学のナノテラス(放射光施設)のような施設を核とした実績づくりも必要だったのでは」と、これまでの誘致活動を回顧。佐々木氏は、関係自治体における課題や役割について触れ「研究所が来たから若者が集い、経済的発展が約束される――のではなく、自治体としての努力が必要」と指摘。住民に対し誘致によるメリットとデメリットを正確に伝え、国際交流の機運を醸成するような事業の実施などを提言した。