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新スパコン「アテルイ3」始動(国立天文台水沢)
ILC誘致のリミットは来年3月(岩手県立大の鈴木学長)
素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の北上山地誘致を目指している県立大学の鈴木厚人学長は10日、盛岡市内で講演した。ILCなどを候補とする「ヒッグスファクトリー」の建設を巡る直近動向を踏まえ、「来年3月までに日本政府の前向きなILC誘致判断がなければ、日本での実現はついえる」と改めて危機感をあらわにした。
講演会は県ILC推進協議会(会長・谷村邦久県商工会議所連合会長)の役員会に合わせて行われた。推進協役員は奥州商工会議所の鎌田卓也会頭ら、県内経済団体の代表ら25人で構成されている。
鈴木学長は、ILC誘致に関する流れを振り返るとともに、ILC誘致に対し慎重な姿勢を示した文部科学省有識者会議、日本学術会議の見解を改めて批判。「現実を無視する判断で、いつもいいところまでいってストップすることの繰り返しだ」と憤慨した。
中国が進める大型円形加速器「CEPC」が、来年にも計画承認される見通しにあるとし、「中国はヨーロッパを相手に、研究者を招くための宣伝を行っている。ヨーロッパとしては、対抗措置として、FCC-ee(スイスとフランスの国境に計画されている大型円形加速器)の可能性を含めた将来戦略を来年3月までに行う。それまでに日本政府がILC誘致に動かないと、完全にアウト」と強調。「ヨーロッパは中国に研究者が流れていかないよう、無理をしてFCC-eeを打ち出している。日本がILCに前向きになれば、ヨーロッパはILCに合流するだろう」との考えを示した。政府判断を後押しする強力な動きが必要だとし「皆さんの支援と連携をお願いしたい」と呼びかけた。
講演に先立ち行われた推進協役員会では、本年度事業計画などを確認。日本政府に前向きな判断を働きかけるための要望活動を継続する。国民の機運醸成を図るため、情報発信を強化。PR動画を新規に制作する予定だ。
推進協の会員数は昨年度末現在、法人・団体468会員、個人41会員の計509会員。年度当初と比べ、法人・団体が24会員、個人が10会員それぞれ減少した。個人会員の高齢化や会費未納などが理由。谷村会長は「会員減は気になるところではあるが、もう一度原点に返って、普及・啓発活動に力を入れていきたい」と述べた。