ILC「新しい進め方」必要(KEK機構長、仙台で講演)
ILC計画、誘致へ働きかけ継続(岩手県の推進協)
岩手県国際リニアコライダー(ILC)推進協議会(会長=谷村邦久・県商工会議所連合会長)は11日、盛岡市内のホテルで役員会を開き、本年度事業計画などを承認した。欧州原子核研究機構(CERN)が5月、「欧州素粒子物理学戦略2026年改訂版」で、将来円形衝突型加速器(FCC-ee)を次世代加速器計画の優先候補に位置付ける一方、ILCへの直接言及を見送るなど、ILCを取り巻く国際環境は厳しさを増している。同協議会は、日本政府によるホスト国としての意思表明が依然として行われていない現状を踏まえ、政府への働きかけをこれまで以上に強化する方針を確認した。
(児玉直人)
欧州戦略“非掲載”で逆風も……
同協議会は、先端加速器を線形に並べた大規模な素粒子実験施設「ILC」を、本県南部の北上山地に誘致しようとしている。県内の経済関係団体や個人などで構成している。
谷村会長はあいさつで、「欧州ではFCC-eeが優先され、中国が計画する円形加速器(CEPC)も停滞している。こうした状況だからこそ、日本が誘致への意思を示すのが重要だ」と強調。「産学官が一体となり、政府による意思表明を勝ち取っていかなければならない」と述べた。
本年度は政府や国会議員への要望活動を継続するほか、高市早苗首相が今夏中の策定を目指す「日本成長戦略」の中に、先端加速器技術の位置付けを目指した働きかけを強化する。素粒子物理学者らの国際会議の場を利用し、誘致実現に向けた情報発信も進める。
協議会事務局からは、5月に採択された欧州戦略改訂版についても報告された。同戦略ではFCC-eeが次期旗艦計画の優先候補に位置付けられた一方、ILCへの直接的な言及はなかった。
議事後、県ILC推進局の前田敬之副局長は、欧州戦略改訂版について「将来の科学的ビジョンをまとめたものであり、加盟国の予算拠出を直接決定するものではない。CERNは2028年までに加盟国、準加盟国との間で協議を行う。ドイツなどは巨額予算の支出に慎重な姿勢を示しているなど、課題がまだある。米はFCC-eeを念頭にした動きにシフトしている」などと説明。「ILC実現に向けた世界的議論をリードさせるため、政府に働きかけ国民機運を高める。誘致に向けた大きなヤマ場だ。一日も早く政府に決断してもらうよう働きかける」と語り、支援を求めた。
引き続き、素粒子物理学者の鈴木厚人・岩手県立大学長は冒頭、「ILCがなかなか実現せず、責任を感じる」。国会議員らの理解は広がっているとしながらも、「応援してくれる議員はいるが、旗を持って突っ走ってくれる人はいない」と現状を語った。
その上で「CERNが2028年に向けて進めている科学的妥当性や財政的実現性の検証、地元住民との対話というのは、本当は日本政府がILC実現のためにやるべき内容だ」と指摘。「今必要なのは政府がホスト国としての関心を表明し、国際協議を主導することだ」と訴えた。
ILC計画を巡っては、文部科学省の有識者会議が国際的な費用分担や国民理解などを課題として指摘して以降、政府による正式な誘致判断には至っていない。鈴木氏は「必要条件を整理し、日本が主導して国際的合意を図るよう努める必要があり、そのために今、準備研究所を早急につくるべきだ」などと持論を展開した。