【連載企画】戦時の星空 見つめて
BH記者会見の舞台裏も(天文台水沢・本間希樹所長が新著)
国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長(49)の新著『見えないブラックホールを見る―世界をつなぐ観測プロジェクト』が、日本評論社から出版された。研究解説だけでなく、本間所長が天文学者になるまでの生い立ち、ブラックホール(BH)撮影成功の世界同時記者会見の舞台裏などにも触れている。四六判256ページ、定価は税込み1980円。
6冊目となる自著。研究成果の解説といった客観的な内容に加え、本間所長の人生や折々の場面で感じたことなど、個人的な記述を初めて盛り込んだ。
本間所長がBH撮影成功を発表した、2019(平成31)年4月の記者会見の舞台裏も紹介。国際プロジェクトのため、開催場所やその発表方法をどうするか、関係者間で議論が交わされた様子に触れている。本間所長らは日本の報道関係者に、解禁日厳守の条件で事前説明をしたかったが、それがかなわなかった。会見の案内をしていながら、内容を話せないという心苦しさもつづった。
本間所長の人間味が感じられる回顧録も見どころ。小学生のころ親に買ってもらった図鑑が、天文学との最初の出会い。中学生のときには、テレビゲーム機をやりたくて友人の家に押しかけたことも。クラシック音楽が好きになり、大学4年間は学内のオーケストラでバイオリンを弾いている日が多かったという。
大学院に入り、博士号取得間近でもその先の職があるかどうか分からない不安な状況。そこへ舞い込んできたのが、水沢を拠点に新しい電波望遠鏡で観測・研究を行う「VERA(ベラ)プロジェクト」。このプロジェクトがなかったら、本間所長は天文学者になることも、BH研究に携わることもなかったかもしれないと振り返っている。
思っていた研究成果が出ないとき、水沢VLBI観測所の前身、緯度観測所の初代所長、木村栄が眠る多磨霊園へ墓参し、願掛けしたこともあった。「科学者にしては非科学的な行為に見えるかもしれないが、科学者も一人のか弱い人間」と記した。
本間所長は「研究者という人間が普段、どういう目線で何をやっているのか感じてもらえたら。成功ばかりでなく、失敗も当然ある。工夫しながら目標に向かって進む楽しさを感じてもらい、自分もやってみよう、頑張ってみようという人が現れてくれたらうれしい」と話している。